2P/Encke エンケ彗星

周期3年の歴史的な彗星

周期がわずか3.3年の彗星としてよく知られています。2013年に周期3.2年の311P/パンスターズ彗星が発見されるまでは、最も短い周期の彗星として約200年もの間その地位にありました。かつては肉眼でも見えるほど明るかったそうですが、近年は少なくとも小望遠鏡でないと見ることは出来ません。

3年ごとに回帰するとはいえ近日点距離も0.3auしかないために、タイミングが合わないとなかなか見ることは出来ません。太陽から遠い時は拡散した姿で、太陽に近づくにつれ急速に集光度と輝きを増し、太陽離角が小さくなって視界から去っていきます。北半球では軌道の関係で近日点後の観測は非常に困難です。地球接近時は、太陽から遠いので拡散した姿で見えていることになります。

私が初めて見たのは1990年の近日点前に明け方の空に見えた時。彗星観測を始めてから5年後のことでした。この時は10月の明け方の空で1度しかチャンスはありませんでしたが、有名な彗星を初めて見れたということで、集光の強い姿を見た時の状況は今でもよく覚えています。標準等級はH10=11.0等でした。

1994年の回帰は冬だったため、良い天候の下で観測できました。当初は淡く拡散した姿でしたが、次第に増光・集光度を増しつつ夕方の低空に移動し太陽に接近していきました。わずか2週間でしたが、7個の観測から得られた光度式はm1 = 11.37+5logΔ+10.0 log rでした。

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つづく1997年5月と2000年9月の回帰は条件が悪く見ることは出来ませんでした。2003年12月の回帰は、近日点頃の条件は悪かったものの、0.2auまで地球に接近したため、近日点前の拡散した姿をとらえることができました。標準等級はH10=12.3等程度ですが、拡散していたために暗めに見積もった可能性があります。この後の2007年と2010年の回帰も北半球では条件が悪く見る機会はありませんでした。

2013年の回帰は、当時注目されていたC/2012 S1アイソン彗星など3彗星と同じ明け方の空に見え、観測時間の配分をするだけでも苦労するといううれしい悲鳴の下での観測でした。当初は非常に拡散した大きく淡い姿でしたが、急速に集光が強くなり輝きを増しながら、コマは小さくなり、太陽に接近して見えなくなりました。約1ヶ月間の8個の観測からは光度式m1 = 12.20+5logΔ+13.02 log rが得られました。k=10と仮定した標準等級はH10=11.73等で、過去の回帰とあまり変わりませんでした。

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2017年3月の回帰では、近日点前の2月頃、夕方の低空に10~9等級で見ることが出来ました。タイミングが合わず観測数は3個にとどまりましたが、次第に集光が強まっていく様子は観察できました。標準等級は、H10=11.6で、今までの回帰とほぼ同じでした。

今後、2020年6月の回帰では終始太陽離角が小さい上に、太陽から離れる頃には南天に移動するために観測は難しそうです。

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観測記録一覧

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  • 10.79UT m1=8.2, DC=4-5, dia=3' (8.0cm屈折 73x)。2015年7月5日再検討。

8センチ46倍で見つけたが、思ったより小さい姿だった。ほぼ円形で、核が見える。集光は中程度。光度はほぼ南西にある星と同じ8.5等級前後(この恒星の光度がわからないので詳しい光度はわからない)。彗星の動きは非常に速く、10分間でコマ直径分も移動した。

9月中旬以降、明け方の晴天が少なく観測が非常に遅れた(チャンスはあと10日もない!)

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  • 14.40UT m1=9.3, DC=4, dia=3' (8.0cm屈折 46x)。2015年7月5日再検討。

1月に入ってから、何度も観測を試みたが、10.5等級以上には見えてこなかった。しかし、1週間のブランクの後急増光していた。コマが大きく、8センチ屈折46倍が最も見やすい。集光もある。10等星がすぐ近くにある。ともかく、この観測は私が見た初めての周期彗星の回帰となった。1993pは10等以下、1993aは10.5等以下(で見えなかった)。

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  • 23.40UT m1=8.0, DC=5, dia=4' (8.0cm屈折 73x)

透明度の低かった昨日よりずいぶん見やすい。といっても、月明はひどい。輝く核が見える。コマはかなり拡がっており、5分角以上かも。集光も著しい。光度は7.6等よりは暗いが8等程度はある。1993pは、9等星は見えたが確認できず。9.0等かそれ以下。

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  • 24.39UT m1=7.8, DC=5, dia=4' (8.0cm屈折 73x)

再び条件が悪くなった。注意しないと見のがすことがある。昨日より暗くなったかに見えたが、恒星も暗くみえる。感覚的には8等以下である。核は高倍率でみえる。コマが太陽側に明るい気がする。それにしても、これだけの明るさの彗星は足かけ3年ぶり(1992t P/Swift-Tuttle)である。

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  • 29.38UT m1=6.9, DC=7, dia=3' (8.0cm屈折 46x)

観測はもうムリかとも思ったが、青空の中に見ることができた。集光度が非常に高く核が明るい。光度は6.3等星にひけを取らない。7.4等星よりは確実に明るい。今日まで光度はほとんど予想通りだった。このぶんだともう1日ぐらいは見えるかも?しかし最終観測になる可能性が高く、18時20分すぎまでその姿を追った。高度は計算上6度であった。

1月30日18時頃、彗星をたよりに試みたが、観測することは出来なかった。透明度の条件は29日より良かったが。

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m1=10.6 , DC=2 , dia=3' (20.3T10 x62)

実に10年ぶりとなるエンケ彗星の観測。前回9月末に挑戦した時はまったく歯が立たなかったが、今朝はあっさりと見れた。20センチ62倍(最低倍率)で最も見やすい。ただ、コマが大きく集光はほとんどない。100倍ではわずかな中央集光のみが見える。10分間でも高速で移動する様子が分かった。かつての273Pを連想した。

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m1=7.4 , DC=5 , dia=3 (11.0M9 x40)

低空までみえる田んぼに移動しての観測。モヤと光害で白みがかったバックに微かな光斑のある姿がまず見つかった。目が慣れると小さく輝く集光が明瞭になった。かつて見たエンケ彗星の姿そのまま!視野には7等星しか見えないが、その星と同じくらいの光度。

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  • 12.83UT m1=7.2, DC=7-8, dia=2' (11.0cmM 40x)

一見して惑星状星雲かと思うほど小さく、集光している。わずかに周囲が拡散した恒星状。中心はよく輝いている。光度は近くの7.2等星と同じだが、6.99等星よりは暗い。5センチ7倍双眼鏡ではわからず。5時過ぎに、水星が地平線上に姿を現した。5時10分(太陽高度-13.5度)には、スピカ並みかそれ以上の光度だったが、5時15分(太陽高度-12.5度)には地平線付近が白んできて水星の輝きが失われてしまった。

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  • 21.41UT m1=9.2, DC=5, dia=2.5' (20.3cmSCT 36x)

土日に曇ってしまい、9日ぶりの観測。すっかり集光度が増しエンケらしい変化を遂げていた。高度が低くなり20cm62倍の視野では10等星までしか見えず、11等星は見えない。その中でも2Pははっきり見えるため、9等以上の光度がありそう。9.17等星とほぼ同じとした。

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  • 18.79UT m1=9.8, DC=2, dia=3' (20.3cmシュミットカセグレン 62倍)

ほとんど集光のない大きいコマ。20cm62倍で意識してわかる。倍率を上げれば弱い集光はわかるが、淡いので核の偏心はいまひとつわからない。103Pより集光は弱く、大きい。光度は10.3等+11.0等の合成等級とほぼ同じ。NGC2604は意識しなかったので見なかった。