C/2016 U1 (NEOWISE) ネオワイズ彗星

人工衛星で発見され、太陽近くで急増光した小彗星

2016年10月に、人工衛星NEOWISE(WISEから改称)によって微光の19等で発見された彗星です。当初は微光彗星で眼視的には厳しいだろうと思われていましたが、11月末に急増光しました。

12月前半には地球に0.7auまで接近して北天を大きく移動し、10等級で非常に拡散した姿をとらえることができました。その後は急速に南下しつつ太陽に接近し、明け方の低空では集光の強い姿に変貌。12月中には急増光していたため、肉眼等級まで明るくなる期待もありましたが、彗星自体が小さかったためか、翌年1月に太陽に接近しても7等級どまりでした。

非常に低い空に移動してしまったために、自宅ではなく近所の開けた田んぼまで出かけて、この彗星を追い続けました。私が最後に見たのは1月7日朝(6.86UT)で、10日の朝(9.87UT)にはもう見えなくなっていました。世界的にも近日点前の眼視観測は7UTどまりだったようです。q=0.3auで小型の彗星でしたが、近日点後も生き残ったようです。

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観測記録一覧

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  • 10.83UT m1=10.3, DC=1-2, dia=4' (20.3cmSCT 36x)

当初、20cm62倍でわからず、36倍にしてなんとか確認できた。ほとんど集光はなく、淡い姿。再度62倍で試みたところ、今度は明瞭にわかった。いったんイメージが掴めると見やすい。消え入る頃の252Pのイメージに近い。大きく平坦で、集光部は見当たらない。30分間でかなり移動していくのがわかる。

※スケッチNo.1(12月8日朝)は、不確実観測のため公開していません。

2016U1_003-editPosi.jpg

  • 23.85UT m1=8.8, DC=4, dia=5' (20.3cmSCT 36x)

高度が下がって屋根の上に姿を現した時は既に薄明が始まっていた。20cm36倍でいきなり集光の強い輝きのあるコマが目に入った。星状核がありそう。前回とはまったく違う明るい姿。夕方の45Pと競いそう。ただ、206倍まで上げると中央集光は弱く中心部のコマは平坦。星状核は見当たらない。短時間で移動を確認する間がなかった。5cm7倍双眼鏡でも試みたが明瞭にはわからなかった。

2016U1_004-editPosi.jpg

  • 27.85UT m1=8.2, DC=4-5, dia=4' (11.0cmMaksutov-C 40x)

高度が下がって住宅の影に隠れてしまうので、急遽移動して11cmで観測。視野に入れた瞬間は淡く、減光したのかと思ったが、口径差と低空によるものだったらしい。次第に輝いて見えるようになった。集光のある姿であまり大きくない。核があるように思えるが、86倍程度では中央集光は弱くなってしまう。光度は8.4等星より明るく、7.97等星よりは暗い。8.2~8.3等。5センチ双眼鏡では微か、あるいはほとんどわからず。

2016U1_005-editPosi.jpg

  • 29.85UT m1=7.8, DC=5, dia=4' (11.0cmMaksutov-C 31x)

2日前よりさらに集光が増しているイメージ。恒星状の中心核があり、11cm103倍に拡大しても見えている。光度は近くの7.4等星より暗く、7.9等星とほぼ同じかやや明るいとしたが、8.5等星とも近い光度。測定は難しい。5センチ双眼鏡でも見えた気がするが微か。

(補足)光度は、採用する星表の値によって異なり、HVで7.8等、HKで8.0等でした。

2016U1_006-editPosi.jpg

  • 02.86UT m1=7.6, DC=7, dia=3' (11.0cmMaksutov-C 31x)

かなり下がってしまった。モヤの中に沈んでいる。コマは小さく、非常に集光している。一見すると恒星状にも思える。光度は近くの7等星2つに近いが、下の8等星とも比較できる。M14(以前8.0等と測定)は、ごくかすかにしか見えず、これよりあきらかに明るい。

2016U1_007-editPosi.jpg

  • 03.86UT m1=7.6, DC=7, dia=3' (11.0cmMaksutov-C 31x)

さらに高度が下がり、透明度の悪さもあって昨日より見にくい。彗星は非常に集光が強いが小さいため視野に入れた時は星かと思ってしまった。核が目立つ。光度はすぐ近くの7.67等星(7.8HK)とほぼ同じだが、条件を考えるともっと明るそう。M14はわからず。

2016U1_008-editPosi.jpg

  • 04.86UT m1=7.4, DC=7-8, dia=2' (11.0cmMaksutov-C 31x)

5:30(太陽高度-16.4°)過ぎまで見つけられなかった。当初はかすかだったが、次第に輝きを増して見えるようになった。彗星の周囲には星が見えないため、スケッチは輝星が入るようにずらした。コマはごく小さく恒星かと最初は思ったほど。集光が非常に強い。光度は8.23等星より明るく、7.21等星と比較できる(同じか、やや暗い)。6等星よりは暗い。5:50(太陽高度-12.0°)過ぎには見えなくなった。かすかになってしまった。

2016U1_009-editPosi.jpg

  • 06.86UT m1=7.2, DC=7-8, dia=3' (11.0cmMaksutov-C 31x)

空の透明度はあまり良好ではなかったが、地平線上に姿を現した3等星をたよりに辿っていって、なんとか捉えることができた(5時33分。高度6.5度、太陽高度-15.9度)。かすかだったが、次第に見やすくなった。見え始めは恒星かと思ったほど。コマはごく小さく非常に集光が強い。11cm50倍でも核が恒星状。光度はすぐ下(視野で)の7.76等星(7.64HV)に近いが、6.90等星よりはやや暗い。5時59分にはかすかになった(高度11.5度、太陽高度-10.9度)。(天候が回復する)10日朝に見えなければ最終観測になりそう。

(追記)1月10日朝にも5:40~5:58まで観測を試みましたが、6.5等級以下で見ることは出来ませんでした。