15P/Finlay フィンレー彗星

2014年の回帰まとめ

20150504image1.JPG周期彗星番号でも分かる通り、19世紀末に発見された歴史ある彗星です。1919年には日本人により再発見され「フィンレー・佐々木彗星」と呼ばれていたこともあります。フィンレー彗星の存在は、彗星ガイドブック」などに掲載されていたこともあり、私が彗星を見始めた頃から知っていていました。なんとか一度は見てみたいとは思っていましたが、長らく回帰している間に衰えたようで、微光の回帰が続いていました。

そんな中、2014年の回帰は11等前後で微光ながら比較的好条件なので、期待して待機していました。同時にWikipediaの項目も貧弱なので(この回帰のタイミングにあわせて)加筆のために、各種文献に当たっていました。

2、3日後にはWikipediaの書き換えしようと漠然と思っていた12月18日の昼休み、携帯のブックマーク整理のため、たまたまcomet-mlを開いたところ「15P/Finlay in outburst」のタイトルが。慌ててリンク先を見ると8等級にアウトバーストしているらしい!?帰宅後すぐにベランダに望遠鏡を設置し予報位置に向けてみると、確かに明るく輝く彗星を見ることが出来ました。

幸いこの時期は連日のように晴天が続き、仕事も定時で終わったので(さらにはベランダに望遠鏡を設置したまますぐ観測できたので)、ほぼ毎日減光していく様子を観測することができました。その間、見かけ上火星にも大接近しました。そして12月末、月が太る頃には20センチを以てしても微かとなり、このまま衰弱して最終観測になることも覚悟して一旦観測を終えました。天候は良かったので満月下でもC/2014 Q2ラヴジョイ彗星の観測は続けました。

年が明け、2015年1月も好天は続きました。満月が去った直後、2週間ぶりの1月7日に再観測したところ、思いの外明るく強い集光の姿で再観測することができました。もしかすると近日点を迎えて彗星本来の活動が活発になったか?と思い、さらに今後再バーストする可能性もゼロではなかったので、監視のためにできるだけ毎日観測するようにしましたが、期待に反し1月13日まで観測を続けても彗星は衰弱する一方でした。

その後悪天候が3日間続き欠測してる間に、なんと(1月16日頃)彗星は前回をしのぐアウトバーストを起こしてしまいました。7等星に達する増光で、尾も伸び、5センチ双眼鏡でも光斑として見ることが出来ました。この彗星としては観測史上最大の光度でしょう。最初期こそ見逃しましたが、次第に減光する様子は詳細に観察出来ました。

再度のバーストを期待して見えなくなるまで連日観測を続けましたが、結局もうバーストが起きることはありませんでした。結局Wikipediaの書き換えも、観測に時間を取られて期間中は実現しませんでした。

2014年回帰で私の観測から算出した光度式はm1 = 8.4+5logΔ+28 log rでしたが、バーストも含む数字です。

0015P-2014mag.png

(バーストがない場合の)ベースとなる光度を適当に仮定して、観測値との差(O-C)をプロットすると、バーストの状況がわかりやすくなります。ここでは天文年鑑2014年版で採用されているm1 = 10.0+5logΔ+20 log rをベースにしてみました。

0015P-2014O-C.png

12月17日と1月16日のバーストの存在は知られていますが、1月7日頃?にも増光があるように見えます。実際、1月7日頃は彗星の集光度も高く、その後拡散するような姿を見せていました。もしかしたら第3のバーストがあったのかも知れません。ただ、他の人の観測も調べましたが、ちょうど満月の頃で観測数が少なく判断出来ませんでした。前日の1月6日も好天でしたが、満月のため観測をパスしたのが今でも心残りです。

(※2015年5月5日記載。将来の回帰を観測した場合はこのページを追記・書き換え予定です。)

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観測記録一覧

0015P-2014_001-editPosi.jpg

m1=8.9, DC=5, dia=3', (20.3cmSCT 62x)

昼に、バーストで8等台に達しているとの報を受けて見てみた。薄明終了20分前なのに、62倍で視野に入れてすぐ見える!想像していたより見やすい。62倍で集光が強いが、133倍まで上げても恒星状の核は見えてこない(2014 Q2よりゆるい)。光度は、9.06等星と同じか、わずかに明るい程度。8.9等か9.0等で迷った。コマも比較的大きい。歴史的な経緯のある彗星を見ることが出来て感慨深い。

0015P-2014_002-editPosi.jpg

m1=9.2, DC=4, dia=3', (20.3cmSCT 62x)

低気圧接近のため観測するつもりは全くなかったが、山の稜線が思いの外はっきり見えたので観測を試みた。火星が近いので購入が楽。7等台の報告もあったので多少期待はしたが、昨日に比べると見にくくなってしまった。20センチ62倍でも見えるが、集光が弱まり、昨日のような鮮烈な印象はない。光度は9.28等星と同程度で、9.0~9.4等か。ただ、薄雲も広がっており、透明度のために見にくかった可能性はある。

0015P-2014_003-editPosi.jpg

m1=9.6:, DC=3-4, dia=2', (20.3cmSCT 62x)

まだ62倍でも見えるが、淡くなってきている感はある。11等星がコマにほとんど接しているので、測光は難しい。合成等級からの計算で9.2~9.6等の中間、100倍の単独で9.95等と同じとしたが、不正確。206倍で中央集光部分と11.4等星が並んでいるのがわかる。

0015P-2014_004-editPosi.jpg

m1=9.4, DC=4, dia=3', (20.3cmSCT 62x)

薄雲が広がっていたが、薄明終了を前に消えた。細い月が出ていた。ついに火星と同一視野に入った。30分角以内にあり、その輝きで彗星が霞むので測光時には火星を外さねばならない。彗星自体は20センチ62倍でも目をそらさないと見えないほどかすか。ただ、コントラストのせいか、77倍では見やすくなる。集光は弱いがまだある。コマは大きめ。光度は難しいが少なくとも9.9等星よりは明るい。9.3~9.4等か。何れにしても、火星と彗星を同時に見れるのはとても珍しい!

0015P-2014_005-editPosi.jpg

※視野円の直径は昨日まで(50')の3分の1以下。

昼に気圧の谷が通過して雲が広がったが、夕暮れには山の稜線がはっきり見える程度には回復した。ただ、昨日よりは透明度が低く月が出てきた。

ついに火星との最接近。だが、20センチ62倍、77倍でもほとんどわからない。昨日までと同じ62倍(50分)の視野で接近した様子のスケッチを描きたかったが無理で、NGC404のようには見やすくなかった。133倍以上ではやや見やすくなり、火星と同時に見れる。しかし、輝きに幻惑される。206倍が最も見やすい。彗星には集光はある。測光はしなかった。彗星の移動が速く、10分間でも位置がどんどん変わる。

0015P-2014_006-editPosi.jpg

m1=9.6, DC=4, dia=3'(20.3cmSCT 62x)

三日月が火星のそばまで来ている。今日はまったく見るつもりはなかったが、透明度が良好なようなので観測してみた。まだ火星のそば20'にあって同視野に入る。20センチ62倍でかすか。コマが大きく中心のみの集光はかえって強まる?77倍~100倍で多少見やすくなる。光度は難しいが、10等級以上はある。9等星が明るく見えない空。9.5~9.6等か。

0015P-2014_007-editPosi.jpg

m1=9.0, DC=5, dia=2.5', (20.3cmSCT 62x)

去年の(月が太る前の)最終観測から2週間近く経ち、もう拡散して見えないことも覚悟していたが、正反対にかなり見やすい!単に月が去っただけでなく、再増光しているのかも。20センチ62倍で見やすく、36倍でも白いバックの中かすかにわかる。100倍でかなりはっきりする。集光もあり、206倍では11等級程度の微星状の核。コマも大きく拡がる。光度は、ちかくの9.7等星よりは確実に明るい。8.8等星、8.6等星よりは暗い。9.0(TT)等(8.9TJ)とほぼ同じ。8.9等~9.2等程度か。11センチ鏡でも見えそう。

0015P-2014_008-editPosi.jpg

  • 8.38UT m1=9.1, DC=4-5, dia=2', (20.3cmSCT 62x)
  • 8.39UT m1=9.0:, DC=4, dia=3' (11.0M9 x40)

昨日、予想外の明るさで見えていたので、再バーストのさらなる増光を期待しつつ向けてみたが、残念ながら光度はほとんど変わらず。しかし、20センチで見やすい。これなら11センチでもいけるか?と思い11cm望遠鏡をを向けてみた。かなり淡いが、大きく拡散したコマはわかる。あまり集光は強くない。20センチでは見えた11等の微星がほとんど見えない。ただ、8.8等星も弱くしか見えないので、光度測定すると9.0~8.5等程度となる。

0015P-2014_009-editPosi.jpg

m1=9.3, DC=5, dia=2.5', (20.3cmSCT 77x)

前日までと大きく見え方は変わらない。集光がある姿。20センチ36倍~206倍で見えるが、77倍で最も見やすい。206倍では、かすかに11等の恒星状の核がある。光度は、9.36等星とほぼ同じ程度。9.24等星と同じか、わずかに暗い。

0015P-2014_012-editPosi.jpg

m1=9.9, DC=4, dia=4', (20.3cmSCT 62x)

一日で大きく変化するものではないが、わずかに集光が弱まっている気がする。20センチ62倍では10.0等以下に感じるが、100倍ではコントラストのためか、かなり雲がはっきりする。ちかくの9.9(10.2)等星と同じか、やや明るい。星表上(Guide9.0)には2つの星がある(が、実際にはひとつだろう)。9.7~10.2等に分散していて、どの数値が正しいかわからない。10.2TJとすると彗星は9.9~10.1等程度。

0015P-2014_013-editPosi.png

  • 17.39UT m1=7.3, DC=6, dia=3.5',tail=5'/75°? (20.3cmSCT 36x)
  • 17.40UT m1=7.3, DC=5, dia=-' (5.0B7x)

悪天候で3日間欠測が続いてしまった。アウトバースト(10日毎に起きている可能性もあったので)を警戒して毎日観測していたが、まさにその欠測の間にバーストしてしまった。強い薄明が残る中、20センチ36倍で集光の強い明瞭な姿が目に入った。比較星を取るのも難しい明るさ。7.2HV星(7.3HK)とほぼ同じか、わずかに暗い。7.6HV(7.8HK)よりは確実に明るい。62倍では、50分角の視野内で一番明るい。集光は、双眼鏡(5センチ)で見たラヴジョイ彗星なみに強いが、206倍でも恒星状の核はわからない。36~62倍で、かすかに尾があるようにも思える。

双眼鏡(5センチ7倍)でも見える。微星状に近いが集光のある面積体。7.2~7.6等の間。

0015P-2014_014-editPosi.jpg

m1=7.8, DC=5, dia=3.0',tail=4'/75°? (20.3cmSCT 36x)※1/20一部修正。

今日も薄明から探し始めた。17時45分(高度34°、太陽高度-10°)から急に見え始めた。20センチ36倍で昨日と余り変化ないように思うが、やや減光したか。18時10分過ぎから薄雲が全天を覆ってしまい、スケッチの星の書き込みが途中になってしまった。光度測定も不十分なまま終わってしまった。7.48HV(7.6HK)より暗く、8.24HV(8.0HK)と同程度、またはやや明るく見えるが、2星の光度差は小さく思えたので、HKの方が見た感じに近そう。雲の影響もありそう。62倍では、明らかに昨日より集光が弱まってる。尾がある?

5センチ7倍双眼鏡でもかすかにわかる。あまり減光は感じない。

0015P-2014_015-editPosi.jpg

m1=9.0, DC=4-5, dia=3',tail=? (20.3cmSCT 62x)

20センチ36倍で彗星に向けてすぐには見つけられない。淡い。昨日までの輝きがウソのよう。薄雲がかかっていた影響を考えてもかなり減光している。62倍ではまだ見やすい。集光もあるようだが、100倍~206倍では集光も弱い。星状の核は見あたらない。光度は8.6等よりはかなり暗く、9.16等星に近い。

0015P-2014_018-editPosi.jpg

m1=9.8, DC=3-4, dia=2.0', (20.3cmSCT 77x)

直前まで曇っていたが、日没後急速に晴れてきた。月と透明度のせいか昨日と比べても淡い。光度は9.58等星と10.1等星の中間ぐらいか。どちらの比較星とも近い光度。20センチ206倍まで上げても恒星状の核は見えない。62倍ではかなり厳しいが77~100倍ではまだ見やすい。

0015P-2014_019-editPosi.jpg

m1=10.7, DC=3, dia=1.5', (20.3cmSCT 100x)

薄明が終わっても天頂の月のため空が青い。透明度のおかげでなんとか捉えられた。20センチ62倍ではほとんどわからない。77倍でかすか。倍率を上げるほど見やすくなる。100倍でわずかな集光、206倍ではまだ集光が強いことがわかる(DC=4)。光度はちかくの9等星2つよりは明らかに暗いが、10等星とは比較可能。10.50等星と同じかやや暗い。10.97等星よりは明るそう。

0015P-2014_020-editPosi.png

m1=11.0, DC=3, dia=1.5', (20.3cmSCT 133x)

月が明るさを増したためか、さらに淡くなった。20センチ100倍でもかなり見づらく、133倍でようやくはっきりする。ただし見失うこともある。まだ集光はある。光度はちかくの11.1~11.7等星(すべて似た明るさに見える)よりはまだ明るい。11.10等星よりわずかに明るい。

0015P-2014_021-editPosi.png

m1=10.9, DC=3, dia=1', (20.3cmSCT 133x)

念のための観測。月明で空が青いが、透明度は昨日よりも良い。大きな変化はない。20センチ133倍よりも、206倍の方がコントラスト的に見やすい。ちかくの10.9~11.3等星とほぼ同じ光度だが、場合によってはさらに明るいかも。コマ直径は1~1.5分、206倍で集光、さらに彗星のそばの13等星が見える気がする。

0015P-2014_022-editPosi.png

m1=11.4, DC=2, dia=1.5', (20.3cmSCT 133x)

月明が去って久々の暗夜の観測。観測自体は満月下の2月3日(18時20分にm1=10.8: DC=3-4)以来だが、その時に比べてもかなり淡く暗くなっている。20センチ100倍で厳しく、133倍でもきつい。拡散が進んでいるよう。206倍でようやくわずかな集光のある姿が明瞭になる。光度は、ちかくの11.1~11.4等星並みの光度。比較星自体の光度がカタログ値よりずれているように思える。

0015P-2014_023-editPosi.jpg

m1=11.6, DC=2, dia=1' (20.3cmSCT 206x)

非常に淡い。前回の時にかなり減光しもう無理かとも思ったが、なんとか20センチ206倍で見える。わずかに集光はあるよう。206倍では、コマは大きく見える。1~1.5'か。133倍では厳しい。光度は11.47、11.9等星と同じ程度。再バーストがなければ最終観測かも。

0015P-2014_024-editPosi.jpg

m1=11.8:, DC=2, dia=1.5', (20.3cmSCT 167x)

極めて淡くなった。20センチ133倍~167倍で辛うじて、206倍~250倍でやや見やすくなるがそれでも存在を確認するのも厳しい。拡散しているのはわかる。光度は11.5~12等程度か。133倍で大きいコマがあるような気がしないでもない。バーストでもない限りは、これで観測(望遠鏡を向けるのは)終了とするつもり。