252P/LINEAR リニア彗星

地球に大接近しつつ増光した短周期彗星

本来なら特筆することもない微光の短周期彗星ですが、2016年の回帰ではたまたま地球に大接近するために明るくなると予報されていました。天文年鑑2016年版には、南天で0.04auまで接近し9等級まで明るくなるものの、北上して日本から見える頃には11等まで減光するだろうとの記述が。そのため、一応期待はしつつも拡散して実際の観測は難しいだろうと思い、一度でも見えれば幸運という感じで構えていました。

ところが、3月に南天で見えだすと、南半球からは予報の10等を上回る観測報告が続々と寄せられ、近日点通過の3月15日を過ぎる頃には6等級をも上回り、肉眼での観測報告さえ寄せられるようになりました。

4月に入ると彗星は北上し、いよいよ日本でも射程に入ってきましたが、なかなか天候に恵まれず、満月すぎということもあって突如肉眼彗星が現れた!という感じには行かず、最初はかすかな小彗星のイメージでした。しかし北上して観測条件が向上すると、大きなコマの双眼鏡彗星として楽しむことができました。軌道面が黄道に近く、qが1auに近い短周期彗星だったため、地球と並走する形をとり、長らく地球と0.1au程度の接近した状態が続きました。これは百武彗星の最接近時よりも近い距離です。しばらく6等級前後の光度を保ち、その後は急減光してしまいました。

私の観測だけから光度式は求めにくく、H10=10.2、H20=9.7でしたが、COBSのデータベースでは光度のピークを近日点後40日に持ってくると暗い時期も含め、比較的良く光度を表現できます。標準等級がどの式でも10等前後なのは精度が良いわけではなく、単に近日点距離(=観測された時期)が1auに近いためです。

0252Pmag.png

0252Pcoma.png コマの実直径を調べてみると、3月初旬を原点として直線的に増大していることがわかります(CCD観測で0.003~4au/月の割合)もしかすると、この頃を境に彗星の活動が突如活性化したのかもしれません。

(蛇足)似たような番号の彗星が多いので、この252P/リニア彗星は「にこにー彗星」と覚えました。

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観測記録一覧

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  • 30.80UT m1=9.6:, DC=1-2, dia=1.5'< (20.3cmSCT 100x)

下弦の月がわずか7度にある。透明度は良い。20センチ62倍で、9等星のそばにそれらしい光斑があり、100~167倍で、彗星の移動と共に見やすくなった。非常に淡いが、ある程度の集光はある。次第に11等星に接近するのがわかった。62倍では、多少コマが外側まで拡がっているらしいのはわかる。7~8等はありそう。36倍では月のゴーストもあり、バックが白すぎて確認できず。5センチ7倍双眼鏡でもわからず。

(追記)地球に0.03auまで大接近した周期彗星です。接近時は南半球にありましたが、3月25日以降は日本でも見られる位置まで北上しました。地球と並走しているため、3月末現在も0.1au以下の接近した状態が続いています。私が見た彗星の中では(百武彗星を下回り)一番地球の近くにある彗星です。

ただ、現在は満月過ぎの月光が著しく、淡いこともあってなかなか眼視観測は困難でした。3月25日朝にも試みましたが、8等星まで見える低空でも、見つけることはできませんでした。

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  • 05.77UT m1=5.8, DC=1, dia=25' (5.0cmB 7x)

5センチ7倍双眼鏡で、大まかに位置を見定めて向けると見えてくる。大きいが淡い。ほとんど集光のないかすかな光芒。目をそらすとやや見やすい。ちかくのM14はかすかな微星状で、これよりは大きく見やすう。M33に近いイメージ?光度は難しい。6.17等星と同程度かと思ったが、目が慣れるにつれさらに明るく、5.61等星にも近く感じる。

0252P-2016_004-editPosi.jpg

  • 07.78UT m1=5.7, DC=1, dia=35' (5.0cmB 7x)

5センチ7倍双眼鏡。おとといよりよく晴れたため見ることができた。おとといとあまり変化はない。拡散した大きいコマ。光度は5.4等、5.5等星よりはやや暗いが、6等星いずれよりも明るい。M14は微星状。20センチ望遠鏡でわずかな中央集光が認められる。167倍で数分角の集光部。317倍で13等級程度の星状核が見えた気がする。

0252P-2016_005-editPosi.jpg

  • 11.77UT m1=6.5, DC=1, dia=20' (5.0cmB 7x)
  • 11.78UT m1=10:, DC=1-2, dia=3' (20.3cmSCT 62x)

20センチ62倍で拡散した大きな雲がわかる。集光があり250倍で13等星の星状核がある?中心3'以内は見やすい。C/2014 S2より見やすい。この部分は約10等級。コマは7等星に接している。

5センチ7倍双眼鏡では、コマ内に7等星が入り込んで核のようになっている。拡散して少し注意すれば見やすい。光度は6.2等星とほぼ同じだが7等星の寄与分を除くと6.5等。

0252P-2016_006-editPosi.jpg

  • 17.77UT m1=6.3, DC=1, dia=25' (5.0cmB 7x)

満月前最後の暗夜。5センチ7倍双眼鏡で、その付近を少し注意すればごく淡い雲がわかる。一見して(以前より)薄くなったように感じたが、目が慣れると見やすくなった。ただ、淡いことには変わりない。集光はほとんど無い。光度は6.06等星よりはわずかに暗いが、6.52等星、6.69等星よりは明るい。20センチ36倍~62倍で拡散した雲状。167倍では1'以内の集光(核?)がわかる。

0252P-2016_007-editPosi.jpg

  • 29.63UT m1=8.0, DC=1, dia=7' (20.3cmSCT 36x)
  • 29.64UT m1=7.6, DC=1, dia=15' (5.0cmB 7x)

きわめて淡いが見ることが出来る。どこまでコマが拡がっているかわからない。わずかに集光があり、コマ内に微星がある。20センチ62倍では見えるが、167倍では分からなかった。光度は近くの7.84等星に近い。

5センチ7倍双眼鏡では、7.8等星のちかくにごく淡い光斑として見える。目をそらし気味にすると見やすい。まったく集光がない。7.8等よりは明るいがコマの大きさで稼いでいる。月が昇るとまったく見えなくなった。

0252P-2016_008-editPosi.jpg

  • 04.66UT m1=8.0, DC=1, dia=12' (5.0cmB 7x)

手持ちではまったく分からず、三脚で固定してようやく淡い存在を確かめることができた。本当に薄いが、大きさはまだある。前回よりさらに淡い。双眼鏡観測は今回で最後になりそう。ピントをぼかしてもわかる。8.06等星と同程度。8.5等星は見える。コマの近くに8.7等星があるのは時折わかる。集光はまったくない。3時過ぎには手持ちでも見えるようになった。

0252P-2016_009-editPosi.jpg

  • 04.69UT m1=9.5:, DC=1, dia=5' (20.3cmSCT 62x)

20センチ36倍で最初まったくわからず、星図で確認してやっと見つけた。まったく集光のない大きい姿で、どこまでコマがあるのかまったくわからない。62倍では意外にも見やすくなる。ただ、気を抜くと中心部分を見失う。光度は9等程度に見える。100倍でもはっきりし、167倍でもわかるが、250倍では曖昧になった。

0252P-2016_010-editPosi.jpg

  • 11.72UT m1=8.6, DC=1-2, dia=8' (20.3cmSCT 36x)
  • 11.73UT m1=8.5:, DC=-, dia=10' (5.0cmB 7x)

1時30分に、目覚ましより早く目が覚め、空を見るとすでに半分晴れていた。すばらしい透明度!252Pは20センチ32倍で比較的みやすいが、倍率を上げると薄れてしまう。コマ内に11等星があるが、中心よりわずかに外れており、核ではない。集光はごく弱い。32倍で光度は8.2等星以下で8.8等星よりやや明るい。5センチ7倍双眼鏡ではかすか。ほとんど存在のみ。