C/2013 X1 (PanSTARRS) パンスターズ彗星

近日点前にバースト。6等級で地球に接近し南下した彗星(まとめ)

2015年末から2016年初の冬季には3つの「パンスターズ」彗星が同時に見られました。そのうち最も明るくなり、2016年夏に地球に接近しつつ南下していった彗星です。

発見は2013年ですが、視野に入ってきたのは2015年の秋。明け方の空高く見えていた微光彗星でした。もし1990年台以前だったら、10等級以上まで増光した頃にアマチュアによって夕方の空で発見されていたことでしょう。

次第に増光し夕方の空に回った翌年1月、急に1等以上明るくなりました(グラフ参照)。バーストを起こしたようですが、通常のアウトバーストとは違って集光度自体はあまり高くなりませんでした。

q=1.31auの近日点を通過した2016年4月頃に一旦太陽との合を迎え、2ヶ月のブランクの後、明け方の空に回ってきました。そのまま地球に接近するコースを辿ったため、コマ直径は増大し見かけ光度も増光しましたが、期待したほどではなく最大6等級にとどまりました。

6月下旬に地球に0.64auまで接近しましたが、赤緯マイナス50度近くまで南下し、さらにこの時期は天候が悪かったため、地球接近前の6月3日朝の双眼鏡観測が最後になってしまいました。7月9日夕方にも観測を試みましたが、(おそらく)8等級以下で見出すことはできませんでした。

夕方の空高く見えていた彗星が太陽に接近し、明け方の空で南下していくコースは、季節や背景の星座も相まって、1986年に接近したハレー彗星を連想しました。

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観測記録一覧

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08.77UT m1=12.3, DC=5, dia=0.7' (20.3cmSCT 167x)

C/2014 S2とは別のパンスターズ彗星。非常に小さく微光。20センチ62倍で微星状。100倍以上で面積体とわかる。ちかくに13等星があり、等光にも思えるが注視すると拡散していて、光度はもう少し明るい。集光はあるがS2のような鋭い星状核はない。167~206倍で淡いがはっきりする。

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24.77UT m1=11.3, DC=5, dia=1.3' (20.3cmSCT 100x)

前回の9日朝より、明らかに見やすくなっている。20センチ62倍で微星かと思ったが、100倍で拡散していることがわかる。100倍で観測には十分な大きさと明るさがある。集光は強い。星図には12等級以下の星の光度を記入していたが、その星よりも明るく、11等台だった。

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  • 03.59UT m1=10.2, DC=5, dia=2.5' (20.3cmSCT 62x)

20センチ62倍でおおざっぱに見渡して見つかるほどの大きさになった(見つけやすい)。ただ、光度は11月15日の時に比べれば期待したほど上がっていない。集光がやや弱まったようにも思える。核は13等級程度。シーイングがかなり悪いが、高度に助けられた。

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  • 19.57UT m1=10.0, DC=4, dia=1.5' (20.3cmSCT 100x)

おとといから好条件だったが、4等星にごく近く、昨日は観測開始直後に曇られてしまい、今日になった。上弦の月があり条件は悪いが今日を逃すと満月後の可能性があったので見ておいた。高度が下がり月明もあるのであまり輝きはなく62倍ではかすか。昨朝のC/2014 S2よりはかなり淡い。ただ、光度は10等星に近く、あかるくなっているようだ。集光は弱く拡散している。

2013X1_007-editPosi.png

  • 29.44UT m1=9.9, DC=4, dia=2' (20.3cmSCT 62x)

夕方早い時間の観測になった。バックは光害で白いが高度が高いのが救い。20センチ62倍で拡散して見える。次第に拡散しているように思えるが中央集光はある。恒星状の核もあり、206倍で13等の星状。コマの形状は円形で尾はわからない。光度はちかくの9.78~10.27等星のどれとも近い。9.8~10.1等か。

2013X1_008-editPosi.png

  • 04.45UT m1=8.5, DC=4, dia=5' (20.3cmSCT 36x)

バーストして8等級らしい?という情報がcomet-ML他にあったので見てみた。確かに明るくなっている。以前は20cm36倍では(暗すぎて)見ようとも思わない明るさだったが、今日は36倍の(広い)視野がないと比較星も選べない。ただ、DCは以前とほとんど変わらない。100倍では逆にDC=3程度。星状核があるように思えるが167倍で12等以下の微星状。中心は明るくない。いわゆるアウトバーストではないのかも。ただ、コマは巨大化している。いろいろな倍率で注視したが、尾はわからなかった。光度は、星図の数字のない恒星数個と比較して先入観のない状態で、後で調べたが8等半ばだった。

2013X1_009-editPosi.png

  • 08.45UT m1=8.7, DC=3, dia=3.5' (20.3cmSCT 62x)

7等台の報告があったので多少期待したが、4日より淡くなった印象。ただ、空の透明度は悪いのでその影響は大きいかも。20cm36倍ではやや見にくい。62倍の方が見やすい。コマは大きい。光度はちかくの8.4~8.6等星と同じか、やや暗い程度。少なくとも9等よりは明るい。

2013X1_010-editPosi.png

  • 10.43UT m1=8.7, DC=3, dia=5' (20.3cmSCT 36x)

おとといより高度の高いうちに見たが、さらに淡くなった印象。やはり拡散しつつあるのか。一応20cm36倍でも100倍でも中央集光自体はあるが、1月4日の時のような輝きはない。コマは大きい。光度は印象では9等以下だが、まだちかくの8.4等星2つと比較できる明るさ。8.6~8.7等か。尾はわからない。

スケッチの微星に3H鉛筆を使用してみた。

2013X1_011-editPosi.png

  • 18.44UT m1=8.9, DC=3, dia=4' (20.3cmSCT 36x)

南下したおかげでベランダからも見える位置になった。大雪の後で積雪がひどいが、結露からは逃れられた。月明と雪面の照り返しでかなり空が明るい(透明度は良好)。彗星はかなり淡いが20cm36~62倍で見える明るさ。集光が弱く拡散しているが、コマは大きく光度的には明るい。8.8-9.2等の間か。少なくとも9.41等星よりは明るいが、8.7等星と同じか、やや暗い。100倍で1'以内の中央集光がわかる。

2013X1_012-editPosiB.png

※背景の明るさを、実際の空の印象に合わせてみました。ふだんの黒背景はリンク先へ。

  • 26.41UT m1=9.0, DC=4, dia=3' (20.3cmSCT 62x)

満月が過ぎて条件は良くなったが、夕方の光害がひどく、残雪もあり空は白い。20センチ36倍でも見ることは出来るがかすかで、62倍でわかる。思ったほどは拡散していない。再び集光しだしている?アウトバーストの影響が過ぎ、彗星本来の姿に戻ったのかも。光度はちかくの9.16等星に近い。9.60等星よりは明るい。コマのすぐそばに11等星があり、ほとんど接している。

2013X1_013-editPosi.png

  • 09.41UT m1=9.0, DC=4-5, dia=3' (20.3cmSCT 62x)

2週間ぶりの観測。一気に南下し薄明直後でも30度を切ってしまった。夕方の光害がひどく10等星もきつい。彗星は20センチ36倍~100倍で見えるが、いずれの倍率でもかすか。集光はあるようだが、そばの11等星の方が見やすいほど淡い。光度はちかくの9等星並み(9等星も明るくは見えない)。

2013X1_014-editPosi.png

  • 10.41UT m1=9.0, DC=4, dia=3' (20.3cmSCT 62x)

昨日に引き続き観測。空の透明度は良いがやはり光害はひどい。20センチ62倍でかすかに集光のある姿がわかる。ちかくの9等星と同時にぼかすとまだ彗星の方がやや明るい。スケッチは、昨日は62倍だったが今日は100倍で行った。細い月がきれいだが、月明と彗星南下で、もしかすると近日点前の最終観測かもしれない。

2013X1_016-editPosi.jpg

  • 04.78UT m1=8.1, DC=3-4, dia=3' (20.3cmSCT 62x)

なんとか住宅ときの間から低空の彗星を見ることができたが、位置を少し見誤っていたため、見つけるのが遅くなり薄明が進んでしまった。やや集光のある姿で、コマは大きめ(2.5~3')。あまり明るくはない。8.15等星に近い明るさ。

2013X1_017-editPosi.jpg

  • 11.77UT m1=7.2, DC=4-5, dia=5' (20.3cmSCT 36x)

薄明が進行する前で、透明度が非常に良いためか今までになく良く見える。よく集光し星状の核がわかる(9等?)36倍の広い視野でないと比較星がとれない。視野に微星がほとんど見えない。コマは大きく拡がっている。252Pよりずっとみやすい。光度は上下の7.3~7.6等星と比較できる。隣の6.8等星より明るいが、星自体は暗く見えるので値があやしい。5センチ双眼鏡では微星状。存在のみわかる。

2013X1_018-editPosi.jpg

  • 18.76UT m1=7.3, DC=4, dia=4' (20.3cmSCT 36x)

透明度は良好だが、ついに月明が迫ってしまった。あまり見やすくはない(252Pはかすか)。20センチ36倍で集光のある比較的大きいコマが見えるが、62倍で確認すると10等星がほぼコマに接している(内包している)。光度は隣の7.3等星と同じ程度かやや暗い。

2013X1_019-editPosi.jpg

  • 01.74UT m1=6.9, DC=4, dia=10' (5.0cmB 7x)
  • 01.75UT m1=7.5, DC=3, dia=6' (20.3cmSCT 36x)

今までで最も良い条件ではあるが、低空。20センチ62倍で最初見えなかったが、目が慣れると大きく拡散したコマがわかる。わずかに集光。36倍では7.5等程度にしかみえない。167倍で11等程度の星状核?5センチ7倍双眼鏡でもわかる。目を反らして存在がわかる程度の淡さだが、コマは大きい。光度はちかくの6.4~6.8等星と比較できるレベル。

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  • 02.74UT m1=7.0, DC=4, dia=10' (5.0cmB 7x)

2日続けての好天。C/2015 WZや252Pは見えず。X1は昨日よりも時間の余裕を持って見たが、特に変化はない。5センチ7倍双眼鏡では辛うじてやや大きめの光斑として見えるのみ。近くの7.2等星の方が見やすいが、コマ面積で光度を稼いでいる。20センチ36~62倍で集光の弱い大きい姿。7.2~7.3等程度。