109P/Swift-Tuttle スイフト・タットル彗星

概要(1992年の回帰)

(過去の観測記録を発掘してアップしていくシリーズ)

最も有名な流星群である「ペルセウス座流星群」の母天体としてもよく知られた大きな彗星で、前回は1862年に回帰し、明るい肉眼彗星として観測されたそうです。

私が最初にこの彗星の存在を知ったのは、ある本にその母天体として紹介されていたのを読んだ時で「1980年回帰」というような記述がありました。見逃したらしい!?と思って落胆しましたが、少し後になって1980年には観測されてないことも知りました(ただし回帰していても小学校低学年なので見れなかったでしょう)。

1980年(頃)回帰説は、彗星の周期が約120年であり、そこから推算される前回の回帰が(大彗星なのに)観測されなかったことから、いくつかの仮定に基づいて計算されたものでした。一方で、1737Ⅱ(Kegler)彗星と同一と仮定した場合には1992年頃に回帰する(周期130年)と予想されていました。周期120年説の方が有名だったのは、当時決定された1737Ⅱ彗星の軌道が1862Ⅲ彗星とはかなり食い違っており、一見すると同一彗星とは思えなかったからでしょう(例えば軌道傾斜角はそれぞれ61度と113度でした)。

しかしその後、1992年回帰説の予報に近い位置で再発見されたのはよく知られた通りです。

私が最初に見たのは、当時の天文ガイドに再発見の報が掲載された後。直前に1992年説に基づいた回帰予想が同誌に掲載されていましたが、本当に再発見されたと知って驚きました。当時の仮符号は1992t(後の彗星符号で109P/1992 S2)でした。

当初微光の彗星でしたが、ぐんぐん明るさを増し、近日点通過頃の12月頃には夕空で5センチ双眼鏡でもよく見える5等星として輝きました。唯一残念だったのは、この彗星の回帰としては条件が悪く、太陽の裏側に回ってしまったことでしょうか。ペルセウス座流星群と同じ軌道を運行しているので、8月中旬に地球に接近するコースを取れば大彗星として輝くはずです。

当時の、1992年の私の観測から決定した光度式はm1 = 4.72+5logΔ+27.7 log r。この式は、9月28日の11.5等の発見観測をも満足しているようです。

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次回回帰は2126年7月12日。地球に0.15auまで大接近し、0等級まで増光して急速に南下するようです。この年まで長生きする自信はちょっとありませんが、一応楽しみにしておきます。ちなみにこの年の8年後2134年にはハレー彗星が回帰し、やはり地球に大接近します。

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観測記録一覧

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m1=9.7 , DC=3 , dia=4' (8.0cm屈折F11 46x)

9月30日の夕方(19時頃10等以下)以来、今まで3回ほど試みたが雲で見えなかった。観測始めの頃は月が輝き、どうにか見える程度だったが、月が沈むにつれ、急速に見えやすくなった。コマはあまり集光がなく平坦である。周辺まで拡がって直径は大きい。光度は矢印の9.5等星より多少暗い程度。10等以上はありそう。K40(23倍)でも背景光が著しいがよく見えた。核はわからなかった。およそ南北方向に11等程度の微星があり、彗星を挟んでいる。

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m1=8.1 , DC=4-5 , dia=7' (8.0cm屈折F11 23x)

さすがは大周期彗星。あっという間に8等級を切る勢いだ。光度は8.0等とほぼ同じ。コマの大きさを考慮すれば7等台だろう。核も恒星状で明るくなっている。コマは輝度はほぼ一様。核付近は多少明るめである。もしかしたら非対称形だったかも。


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かすかではあるが、はっきり見えた。双眼鏡の極限は8等級だったので、双眼鏡で1992tはかなり明るく見えることになる。7.5等星と同程度の明るさである。核も確かめられた。

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観測日の小数表記:26.42569UT =26.42638TT (ΔT=59.0s)
r=1.24078au Δ=1.23487au
α=15h53.07m δ=+49°34.9'(2000.0)
α=15h52.87m δ=+49°36.0'(瞬時)
真高度 h=26.8°/方位角 A=313.4°(北から東回り)/太陽離角 Elong.=66.6°
太陽高度 hSun=-28.8°
天頂方向角 V=65.1°(北から東回り)

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観測日の小数表記:27.40903UT =27.40971TT (ΔT=59.0s)
r=1.23079au Δ=1.22446au
α=16h1.24m δ=+48°36.6'(2000.0)
α=16h1.02m δ=+48°37.7'(瞬時)
真高度 h=30.7°/方位角 A=310.3°(北から東回り)/太陽離角 Elong.=66.5°
太陽高度 hSun=-24.1°
天頂方向角 V=69.0°(北から東回り)


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観測日の小数表記:27.42222UT =27.42291TT (ΔT=59.0s)
r=1.23066au Δ=1.22432au
α=16h1.34m δ=+48°35.8'(2000.0)
α=16h1.13m δ=+48°36.9'(瞬時)
真高度 h=27.8°/方位角 A=311.7°(北から東回り)/太陽離角 Elong.=66.5°
太陽高度 hSun=-28.0°
天頂方向角 V=66.1°(北から東回り)

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m1=7.0< , DC=5 , dia=8' ,tail=15' (8.0cm屈折F11 23x)

ついに月明が影響してきた。透明度は良いが空が白っぽい。しかし1992tは驚異的な勢いで発達している。ついに尾を確認できた。非常に薄いが細く長く存在している。核は矢印の星と同じ光度。内部コマもかなりの輝度である。コマもかなり不規則であるが(少し平たい?)スケッチするのが大変である。光度は7.2等星よりは明るい。6.8等どまりかと思ったが、この勢いだと12月ごろ4等台の可能性もある。これまでの観測では4.6 + 5logΔ + 28log r。n=11.2と異常に大きい。

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観測日の小数表記:04.40972UT =04.41041TT (ΔT=59.0s)
r=1.15365au Δ=1.17078au
α=17h0.86m δ=+39°10.0'(2000.0)
α=17h0.62m δ=+39°10.6'(瞬時)
真高度 h=31.7°/方位角 A=298.0°(北から東回り)/太陽離角 Elong.=63.9°
太陽高度 hSun=-25.8°
天頂方向角 V=67.3°(北から東回り)

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m1=5.4 , DC=7 , dia=6' ,tail=15' (8.0cm屈折F11 23x)

最悪の天気パターンが続いて実に10日ぶり(満月時の11日の観測を除けば17日ぶり)である。一見してコマが小さくなったのがわかる。外部コマはあまり拡がっていない。しかし、集光度は著しく上がり中心部は輝いている。核はその輝きの中でほとんど見つけられなかった。光度もまた上がって5等を切る勢い。H28=4.6の光度式に見事に合致している。尾も長くはないが、根の近くでは明瞭にわかる。幅が広いのか?

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観測日の小数表記:22.42917UT =22.42985TT (ΔT=59.0s)
r=1.01720au Δ=1.26041au
α=18h32.44m δ=+14°15.4'(2000.0)
α=18h32.12m δ=+14°15.0'(瞬時)
真高度 h=18.3°/方位角 A=274.6°(北から東回り)/太陽離角 Elong.=52.1°
太陽高度 hSun=-33.3°
天頂方向角 V=56.4°(北から東回り)

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m1=5.2 , DC= , dia=7' ,tail=10' (8.0cm屈折F11 23x)

雲が途切れた頃には、すでに高度が低くなっていた。光度は5.39等星より多少明るいが、5.09等星よりは暗い。面積体のため比較がむずかしい。コマは内部の2分以内が特に輝く。外部も明るい。核は悪シーイングのためわからず。尾は比較的よく見える。長さは10分程度しかないが幅が広いようだ。

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m1=5.4 , DC=7 , dia=4' ,tail=10' (8.0cm屈折F11 23x)

近日点を10日後にひかえている。月がかなり強い。光度はついに下がった。しかし輝度は高い。コマは小さくなっている。核は見えないが、恒星状であろう。尾が発達している。とくに5'以内は容易に見える。

ともかく、今までに発見された周期彗星(2回以上回帰)では2番目に長く、私が一生のうちでみられる最長周期の彗星になるであろう(P/Mellishが2062年ごろくるかもしれないが)。

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m1=5.5 , DC=6-7 , dia=4' ,tail=? (8.0cm屈折F11 23x)

スケッチは11日ぶりになった。かなり高度を下げずいぶん見にくくなったが、まだ勢力は保たれている。東の5.02等星より0.5等程度暗い。集光はいくぶん落ちたか。コマもまだ大きく尾もわかる。しかし、薄明が強く残っている。一旦雲が切れて冬型の良い天気になったが、1992tを見つけて10分も経たないうちに薄雲がおおってしまった。

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m1=5.6 , DC=6-7 , dia=5' ,tail=? (8.0cm屈折F11 23x)

前日とあまり見え方は変わらない。コマはいくぶん大きめにみえる。光度は5.02等星としか比較出来ないので不正確であるが、昨日とあまり変わっていない。17時55分頃には見えなくなった。

31日17時20分頃からトライしたが見つからず。6等より暗いだろう。