周期彗星番号でも分かる通り、19世紀末に発見された歴史ある彗星です。1919年には日本人により再発見され「フィンレー・佐々木彗星」と呼ばれていたこともあります。フィンレー彗星の存在は、「彗星ガイドブック」などに掲載されていたこともあり、私が彗星を見始めた頃から知っていていました。なんとか一度は見てみたいとは思っていましたが、長らく回帰している間に衰えたようで、微光の回帰が続いていました。
そんな中、2014年の回帰は11等前後で微光ながら比較的好条件なので、期待して待機していました。同時にWikipediaの項目も貧弱なので(この回帰のタイミングにあわせて)加筆のために、各種文献に当たっていました。
2、3日後にはWikipediaの書き換えしようと漠然と思っていた12月18日の昼休み、携帯のブックマーク整理のため、たまたまcomet-mlを開いたところ「15P/Finlay in outburst」のタイトルが。慌ててリンク先を見ると8等級にアウトバーストしているらしい!?帰宅後すぐにベランダに望遠鏡を設置し予報位置に向けてみると、確かに明るく輝く彗星を見ることが出来ました。
幸いこの時期は連日のように晴天が続き、仕事も定時で終わったので(さらにはベランダに望遠鏡を設置したまますぐ観測できたので)、ほぼ毎日減光していく様子を観測することができました。その間、見かけ上火星にも大接近しました。そして12月末、月が太る頃には20センチを以てしても微かとなり、このまま衰弱して最終観測になることも覚悟して一旦観測を終えました。天候は良かったので満月下でもC/2014 Q2ラヴジョイ彗星の観測は続けました。
年が明け、2015年1月も好天は続きました。満月が去った直後、2週間ぶりの1月7日に再観測したところ、思いの外明るく強い集光の姿で再観測することができました。もしかすると近日点を迎えて彗星本来の活動が活発になったか?と思い、さらに今後再バーストする可能性もゼロではなかったので、監視のためにできるだけ毎日観測するようにしましたが、期待に反し1月13日まで観測を続けても彗星は衰弱する一方でした。
その後悪天候が3日間続き欠測してる間に、なんと(1月16日頃)彗星は前回をしのぐアウトバーストを起こしてしまいました。7等星に達する増光で、尾も伸び、5センチ双眼鏡でも光斑として見ることが出来ました。この彗星としては観測史上最大の光度でしょう。最初期こそ見逃しましたが、次第に減光する様子は詳細に観察出来ました。
再度のバーストを期待して見えなくなるまで連日観測を続けましたが、結局もうバーストが起きることはありませんでした。結局Wikipediaの書き換えも、観測に時間を取られて期間中は実現しませんでした。
2014年回帰で私の観測から算出した光度式はm1 = 8.4+5logΔ+28 log rでしたが、バーストも含む数字です。
(バーストがない場合の)ベースとなる光度を適当に仮定して、観測値との差(O-C)をプロットすると、バーストの状況がわかりやすくなります。ここでは天文年鑑2014年版で採用されているm1 = 10.0+5logΔ+20 log rをベースにしてみました。
12月17日と1月16日のバーストの存在は知られていますが、1月7日頃?にも増光があるように見えます。実際、1月7日頃は彗星の集光度も高く、その後拡散するような姿を見せていました。もしかしたら第3のバーストがあったのかも知れません。ただ、他の人の観測も調べましたが、ちょうど満月の頃で観測数が少なく判断出来ませんでした。前日の1月6日も好天でしたが、満月のため観測をパスしたのが今でも心残りです。
(※2015年5月5日記載。将来の回帰を観測した場合はこのページを追記・書き換え予定です。)