C/1996 Q1 (Tabur) テイバー彗星

まとめ。

1996年、百武彗星C/1996 B2の後に出現した彗星です。Taburはタイバーともテイバーともタブールとも呼ばれてカタカナ表記が安定せず、議論になったほどです。

発見から程なく、1988年に出現したリラー彗星C/1988 A1と同一軌道上を公転する、分裂彗星であることが判明しました。1996年8月の発見後は安定して増光し、一時はリラー彗星以上に明るく見え、尾も伸びました。しかしリラー彗星と同様、明るいわりには恒星状の核があまり目立たない彗星でした。そして、10月下旬、それまで5等級で見えていたのに一気に8等級まで減光して驚きました。分裂核の小さい方だったのでしょう。近日点通過を前にして、そのまま拡散して見えなくなってしまいました。

このテイバー彗星の出現は、自分にとって彗星がまさに生き物であることを実感させてくれたもので、強く印象に残っています。

減光前の私の観測からはm1 = 7.53+5logΔ+9.89 log rの、彗星としては一般的な光度式が得られました。赤い○が私の観測です。薄い青はCOBS掲載分の観測値です。当時の自分は崩壊して本当に消え去ってしまったのかと思っていましたが、実際には拡散しながらも見え続けていたようです。拡散し、さらに低空に行ってしまったため暗めに見積もってしまったようです。

1996Q1mag.png

投稿日:


観測記録一覧

1996Q1_001-editPosi.png

10.79UT m1=8.6, DC=3-4, dia=6' (8.0cm屈折 46x)

8日(条件悪)の時は見えなかった。かなり大きく見つけにくいが、一度見るとたやすい。やや集光がある。光度は矢印の9等星と同じか、わずかに暗いが、他の多くの9等星よりは明るい。9.0~8.8等か。

(追記・2015年11月14日)比較星を再検討した結果、8.6等としました。

1996Q1(Posi)_002b-editPosi.png

1996Q1(Posi)_002b.png(ポジスケッチ=黒紙に白鉛筆)

11.76UT m1=7.9, DC=3-4, dia=6' (8.0cm屈折 46x)

(夕方のC/1995 N1は見えず)。前日より空の条件が良いためか少し見やすい。表面輝度は低いが、面積が大きく、光度は第一印象より明るい。9等星と8等星の中間か。昨日の矢印の星より明るいか同じくらい。コマはある程度集光している。高倍率では内部のみ見える(ゆるい球状星団並み)。核は100倍でも認められない。微星が多いが、核はそれ以下(11等以下)。

(2015年11月14日追記)比較星光度から再検討したところ、光度は7.9等程度のようです。

1996Q1_003.png

15.77UT m1=7.8, DC=4, dia=6' (8.0cm屈折 46x)

一見して明るくなっている。コマの輝度が上がり、集光もいくぶん強くなった。10~11等の核(恒星状)があるが、自信はない。コマは3分いないが特に明るい。光度は付近の8等星にほぼ近いが、ただ、輝星(8等)に接しているため、光度の見積もりが難しい。雲がなければ内部もよく見えただろう。

1996Q1(Posi)_004b-editPosi.png

1996Q1(Posi)_004b.png

18.77UT m1=7.4, DC=3-4, dia=7' (8.0cm屈折 46x)

さらに明るくなった。コマがかなり拡がっている。中心4'ほどは高倍率でもわかる。核は100倍でもかすか。11等程度か。かすかに尾が西へ延びているようにも思える。光度はコマが拡がり非常に難しいが、7.7等以上はある。場合によっては7.2等かも。

1996Q1_006-editPosi.png

1996Q1_006.png

22.76UT m1=6.4, DC=-, dia=7' (8.0cm屈折 46x)

天の川の中で輝星・微星がびっしり貼り付いている。Q1は移動が速い。さらに明るくなり6等台。付近の6.3~6.4等星の星いくつかと同じような光度。ただし空の条件が良すぎるのか、6等星と7等星が同じ光度に見える。コマは中心は核が見あたらず、集光のある球状星団そっくり。尾はかすかで自信がない。

1996Q1_008.png

24.77UT m1=6.4, DC=5, dia=10' (5.0cmB 7x)

期待したほど明るくない。やはり空の条件によって見え方は大きく変わるようだ。集光がやや目立つ。尾は見えない。光度は6.1等星よりは暗く6.4等星はある。


1996Q1_009.png

24.78UT m1=6.4, DC=5, dia=7' (8.0cm屈折 23x)

途中雲で遮られた。2日前とあまり変化ないが、やや核の集光が出ているように思える。尾はあると思われるがかすか。光度は東の6.1等よりややくらい。光度比は双眼鏡の時と同じ。核は低倍率では恒星状だが、高倍率にすると消えてしまう。

1996Q1_010-editPosi.png

1996Q1_010.png27.77UT m1=6.4, DC=5, dia=8' (8.0cm屈折 23x)

満月(中秋の名月)の強烈な月明があるが、透明度のおかげでどうにか見える。コマにあまり輝きがなく、光度も不正確である。しかし、コマはかなり拡がっている。核が見えてきた。集光は上がっている。尾があるようだがはっきりしない。


1996Q1_011.png

27.78UT m1=6.4, DC=4-5, dia=10' (5.0cmB 7x)

1996Q1_012-editPosi.png

1996Q1_012.png

15.79UT m1=5.4, DC=4-5, dia=10' (5.0cmB 7x)

20日ぶりにようやく晴れた。コマが大きく拡がっている。中心は明るいが核は目立たず恒星状のものが辛うじて分かる。たしかにC/1988 A1を大きくしたような、似た姿だ。尾は痕跡が認められる。K.40で辛うじて伸びているのがわかる。光度はちかくの5.70、5.81等星より多少明るい。


1996Q1_013.png

1996Q1(Posi)_014b-editPosi.png

1996Q1(Posi)_014b.png

1996Q1_014.png

16.79UT m1=5.8, DC=5, dia=10' (8.0cm屈折 23x)

前日と大きく変わってはいない。中心はよく集光している。低倍率では恒星状の核があるが、高倍率で見えなくなる。尾がわりとはっきりした。特に15'以内はわかりやすい(といっても目をそらし気味にしないと難しい)。光度はちかくの5.7等星並み。


1996Q1_015.png

16.81UT m1=5.7, DC=5, dia=10' (5.0cmB 7x)

1996Q1_016-editPosi.png

20.80UT m1=8.6, DC=3, dia=8' (8.0cm屈折 46x)

異常減光をしている!(前日の曇天が悔やまれる)。どうりで夕方双眼鏡で探しても見つからなかった。コマ自体は大きく集光もある。おそらく核が存在するはずである。しかし、光度は約8等。分裂核なので、以前から少々心配していたが、最悪の事態となってしまった。このまま最終観測を迎えてしまうのか。近日点はまだ10日も先であるのに。

1996Q1_017-editPosi.png

21.82UT m1=9.6, DC=3, dia=4' (8.0cm屈折 46x)

前日よりやや透明度が落ちたとはいえ、好条件。光度はかなり落ち、どうにか見える程度。HM12.5程度でないと見にくい。集光があり(2'~1')コマは小さい。微星がいくつかある。96Q1はまさに彗星としての最期を迎えている。明日観測できるだろうか?11等ぐらいだろう。


23.80UT m1=9.5, DC=-, dia=' (8.0cm屈折 46x)