62P/Tsuchinshan 1 紫金山第1彗星

天文台の名前がついた最初?の彗星

1965年11月1日、中国・紫金山天文台の张钰哲により発見された周期彗星です。発見者名でなく天文台名が付けられたのは、当時の中国が文化大革命直前で、アメリカの天文電報中央局に発見者名などの詳細な情報が伝わってこなかった事情が挙げられます。今でこそ天文台名の彗星は珍しくはありませんが、(事情の違いこそあれ)これが天文台名が付いた初めての彗星だと思われます。同月11日には別の周期彗星・60P/紫金山第2彗星も発見され、第1彗星と同じような軌道で公転しています。

私がこの彗星を初めて見たのは2004年の回帰。近日点を衝の位置で迎える絶好の条件でしたが、極めて淡く、とにかく見るのが大変だった記憶があります。20cm望遠鏡を購入した直後で、それ以下の小口径だったらまず見えなかったでしょう。春の銀河の間を縫って行って写真映えしたようで、画像検索するとたくさんヒットします。2枚目のスケッチでも銀河が入り込んでいます。

2017年の回帰はかならずしも好条件ではありませんが、明け方の東の空で比較的明るく見ることができました。拡散していたため非常に淡い姿でしたが、同時に見えていた24P/ショーマス彗星よりは見やすい印象でした。私の6個の観測から無理やり計算するとk=55の極めて変化の激しい光度式が得られますが、COBSの報告値からも、近日点前の増光が極めて急であることがわかります。62P-2017mag.png

次回の近日点通過は2023年12月で、(北半球で)深夜の空高く見ることができます。計算によれば、木星の摂動により近日点距離が0.1au以上小さくなるため(過去数世紀で最短)、未知の明るさの変化が起きるかも知れません。近日点前の光度式を適用すると、計算上は肉眼彗星に達します。現実にはそこまで明るくならないでしょうが、この彗星としては過去最大の明るさになりそうです(5~8等?)。

投稿日:


観測記録一覧

0062P-2023_002-editPosi-30-0.8.jpg

  • 0062P-2023_002.jpg
  • 07.83UT m1=8.6, DC=2, dia=8' (20.3cmシュミットカセグレン 36倍)
  • 07.85UT m1=8.5:, DC=2, dia=10' (5.0cm双眼鏡 7倍)

20cm36倍でともかく大きい。非常に淡く拡散しているが、集光はある。62倍で1'程度の中央集光がわかる。周辺はどこまであるのかわからない。167倍で集光部のみ。核は不明。光度は8.56等星よりわずかに暗く8.65等星よりわずかに明るいとした。5cm7倍双眼鏡でも存在がわかる。拡散しているが、6等星がじゃまで測光がしにくい。

0062P-2023_001-editPosi-30-0.7.jpg

  • 0062P-2023_001.jpg
  • 09.80UT m1=9.1, DC=3, dia=4' (11.0cmマクストフカゼグレン 40倍)

11cm40倍で淡く大きく拡がったコマがわかる。注視すると小さい中央集光がわかる。10等ぐらいかと思ったが、付近の星と比較すると9等以上はありそう。11cmの集光力不足は否めない。透明度の悪さもありそう。

0062P-2017_005-editPosi-35-0.65.jpg

  • 13.82UT m1=11.7, DC=2-3, dia=2' (20.3cmSCT 100x)

ほぼ1ヶ月ぶり。以前に比べやや見づらい。集光が弱く2016R2より暗く感じる。光度は11.7等~11.8等と同程度か。近くの4430よりもわかる。この銀河は集光があるが彗星よりは暗い。24Pは不明。月に近いせいか。ふたご座流星群の流星が30分間で2個、視野内に見えた。10~11等。

0062P-2017_001-editPosi.jpg

  • 29.81UT m1=11.5, DC=3, dia=2' (20.3cmSCT 100x)

台風一過の良好な透明度の空で観測。26日にも向けたが、結露で自信がなかった。2つの12等星にはさまれている。微光で拡散しているが、集光もあり、20cm62倍→100倍で見やすい。低倍率では12等星がじゃま。光度は近くの11等星に近い。12年ぶりの再会となった。NGC3121もかすかに見える気がする。

0062P-2004_002-editPosi.png

m1=11.4, DC=2-3, dia=2', (20.3cmSCT 62x)

当時のスケッチにはコメントがないが、星の広場報告文のコメントを記載。「初めて見た」とは、この回帰で彗星を見たのが初めて、という意味。前観測はわずかに自信がなかったので非報告。

62P/Tsuchinshan 1(紫金山第1彗星)を初めて見ました。 大きく拡がりかなり拡散していています。予想したほどの難物ではありませんでしたが、 少しでも空の透明度が落ちると見えなくなりそうです。 光度は、コマの中に入り込んでいる13.9等の微星の寄与分(0.1等)を差し引きました。 おとめ座銀河団の中心にあるため、視野はたくさんの銀河で賑やかです。