ブロルセン/ブローセン・メトカーフとも。周期約70年のハレー型の彗星です。その、ハレー彗星の3年後の1989年9月に回帰しました。この「大物彗星」の回帰は前年から心待ちにし、今でも思い出深い彗星です。
当時は、なかなか検出の報が入らないまま予報の近日点通過日が迫り、結局検出されたのは近日点のわずか2ヶ月前の7月3日でした。事前の予報での近日点通過日は9月27.6日でしたが実際には9月11.9日で15日も早く、しかも15等級の暗さだったため検出が遅れたようです。
7月中旬には急激に増光し、9等以上の明るさで眼視観測が始まっていたようですが、例によって私が検出を知ったのは翌月5日発売の天文雑誌上なので、観測はそれ以降となりました。
終始明け方の東の空に見え続け、真夏特有の湿気の多い真夜中に望遠鏡を向けた記憶があります。8月上旬には拡散した姿だったものが、下旬には急速に集光度を増し、尾が伸びていきました。観測は近日点通過前の9月6日が最後となり、1ヶ月観測しただけで東の低空に去ってしまいました。当時としては、光度測定をかなり慎重に行ったので比較的光度式もよく求まったようです。光度式はm1 = 8.51+5logΔ+10.4 log rで(同日観測は明るい方を採用)k=10という平均的な値が求められました。
周期が70年なので、次の回帰は2059年です。今度はハレー彗星回帰の2年前です。今から楽しみであったのですが、計算によると、次回の近日点通過は2059年6月8日。それに基づいて位置推算すると、近日点の前後1ヶ月は太陽離角が20°以下で、しかも太陽から離れた頃には彗星は太陽の南側に位置します。
近日点前は3月の時点で太陽離角が13°しかなく、4月中旬に11等級で27°まで離れるものの、北半球での地平高度は薄明開始時に0°。6月8日の近日点頃には6等に達しますが太陽離角は5°しかありません。近日点後も、7月始めには8等級に減光する頃に太陽離角が20°を超えますが、南下するため薄明終了前に彗星は沈んでしまいます。どう見積もっても2059年には、北半球から眼視観測することは絶望的で、南半球で7月頃にごく地平付近に暗い彗星を見られるか、といったところでしょうか。
ハレー彗星の次に、人生を生きる目標にしてきたといっても過言ではないので、この記事を書くために位置推算をして絶望的な気持ちになりました。今から、なんとか観測する方法がないか思案しています。