ちょうど今から1年前は、ISON彗星がよろめきながらも増光し、そして見えなくなった頃。最近他の彗星についてのまとめ分を書いているが、このタイミングなので回想も兼ねてアイソン彗星について書いてみる。また、個別記事では過去の主なスケッチのポジ化も行った。
発見された頃は、いよいよqの小さい太陽をかすめる彗星を観測出来る!と心躍り、時々観測でお邪魔している開けた田んぼに行くたびに、地平線から真っ直ぐ伸びる尾を想像し、期待していた。ただ、大彗星のキルヒ彗星C/1680 V1との軌道の類似性が指摘されていたため、これも大彗星を裏付ける証拠であると同時に、もし本当に分裂核の副核だったら逆に消滅してしまうかもしれない、というのが唯一の不安であった。
その後、夏頃に太陽との合を迎える前の西空で、本来なら小望遠鏡でも見える明るさに達しているはずだったが、まったくそのような明るさには達しておらず、やや不安が募る。そして、合を過ぎて明け方の東の空に見え始めた時、その暗さにいよいよ不安が確信へと変わっていった。他のネット上の情報から推測すると、11月半ばには消滅してもおかしくない・・・少なくとも私はその覚悟で後の観測に臨んだ。
実際、その後の増光も非常に悪く、log rの係数が5程度という実質的にはまったく増光してない状態が続いたが、11月半ばに入ると、消滅せずに一気に増光を始めた。崩壊の前兆かもしれないが、あるいはもしかして・・!?との期待を抱き、晴れたらできる限りの観測に努めた。
幸いにして、11月19日朝以降は毎朝冬晴れが続き、増減光に一喜一憂しながら、最後に減光して見えなくなる24日朝まで見届けることができた。超低空だったので、普段の20センチではなく運びやすい11センチ望遠鏡を、開けた田んぼにまで持って行って観測を続けた。結局近日点を前に崩壊してしまったのはご承知の通り。
光度式は、16個の観測(1日に2つの観測があって双眼鏡観測がある場合は、そちらを優先)から、m1=8.32 + 5logΔ + 9.3log r。ただし、グラフでもわかるように、10月下旬~11月上旬はこれより低めの値で観測している。
もし、消滅せずにこの光度式のまま増光していたら、近日点通過時にはマイナス8等に達していたかもしれない。