C/2012 S1 (ISON) アイソン彗星

ISON彗星から1年(まとめ)

ちょうど今から1年前は、ISON彗星がよろめきながらも増光し、そして見えなくなった頃。最近他の彗星についてのまとめ分を書いているが、このタイミングなので回想も兼ねてアイソン彗星について書いてみる。また、個別記事では過去の主なスケッチのポジ化も行った。

発見された頃は、いよいよqの小さい太陽をかすめる彗星を観測出来る!と心躍り、時々観測でお邪魔している開けた田んぼに行くたびに、地平線から真っ直ぐ伸びる尾を想像し、期待していた。ただ、大彗星のキルヒ彗星C/1680 V1との軌道の類似性が指摘されていたため、これも大彗星を裏付ける証拠であると同時に、もし本当に分裂核の副核だったら逆に消滅してしまうかもしれない、というのが唯一の不安であった。

その後、夏頃に太陽との合を迎える前の西空で、本来なら小望遠鏡でも見える明るさに達しているはずだったが、まったくそのような明るさには達しておらず、やや不安が募る。そして、合を過ぎて明け方の東の空に見え始めた時、その暗さにいよいよ不安が確信へと変わっていった。他のネット上の情報から推測すると、11月半ばには消滅してもおかしくない・・・少なくとも私はその覚悟で後の観測に臨んだ。

実際、その後の増光も非常に悪く、log rの係数が5程度という実質的にはまったく増光してない状態が続いたが、11月半ばに入ると、消滅せずに一気に増光を始めた。崩壊の前兆かもしれないが、あるいはもしかして・・!?との期待を抱き、晴れたらできる限りの観測に努めた。

幸いにして、11月19日朝以降は毎朝冬晴れが続き、増減光に一喜一憂しながら、最後に減光して見えなくなる24日朝まで見届けることができた。超低空だったので、普段の20センチではなく運びやすい11センチ望遠鏡を、開けた田んぼにまで持って行って観測を続けた。結局近日点を前に崩壊してしまったのはご承知の通り。

光度式は、16個の観測(1日に2つの観測があって双眼鏡観測がある場合は、そちらを優先)から、m1=8.32 + 5logΔ + 9.3log r。ただし、グラフでもわかるように、10月下旬~11月上旬はこれより低めの値で観測している。

2012S1mag.jpg

もし、消滅せずにこの光度式のまま増光していたら、近日点通過時にはマイナス8等に達していたかもしれない。

投稿日:


観測記録一覧

2012S1_001-editPosi.jpg

m1=12.2 , DC=4 , dia=1' (20.3T10 x133)

話題の彗星がいよいよ東の空に姿を現してきた。しかしながら、高度の影響か、先ほど見たLovejoy彗星と比べてもまだ小さく淡い。133倍~206倍で辛うじて存在が認められる。集光はあり、棒状に見るような気もするが、写真の見過ぎかもしれない。「見えた!」というよりは「見えた?」といった感じ。わずかに存在に不安がある。気がつくと補正板に結露があったので拭き取ったら見やすくなった。下弦の月明が無くなればもっとよく見えるかもしれない。

そばの火星は小さい円盤状に見え、模様も見えそうな雰囲気。

2PとC/2013 R1の増光ぷりに大いに期待して覗いたが、まったく増光していない。確かに見えるのだが、とにかく淡い。一時は観測を諦めようかと思ったほど。13等星以下まで見えているので、条件がそんなに悪いわけでは無いはずだが。

2012S1_002.png

C/2012 S1 ( ISON )
IIIYYYYMnL YYYY MM DD.DD eM/mm.m:r AAA.ATF/xxxx /dd.ddnDC /t.ttmANG ICQ XX*OBSxx
   2012S1  2013 10 09.80 xM 11.2 HS 20.3T10 100   1    4            ICQ XX AIKxx

どうしようもなく淡い。一時は観測・スケッチを諦めようかと思ったほど。それでも2彗星と同じ100倍の視野でスケッチしたが、ほとんど恒星がない。12等星が淡く見えるため、透明度が良くないのかもしれない。62倍でも注意すると、集光のある光斑がわかる。

2012S1_003.png

C/2012 S1 ( ISON )
IIIYYYYMnL YYYY MM DD.DD eM/mm.m:r AAA.ATF/xxxx /dd.ddnDC /t.ttmANG ICQ XX*OBSxx
   2012S1  2013 10 11.80 xM 10.7 TJ 20.3T10  62   1    4            ICQ XX AIKxx
   2012S1  2013 10 13.81 xM 10.7 TJ 20.3T10  62   2    4            ICQ XX AIKxx

やや高度が下がってきたため、屋根の上に彗星が昇ってくるまで待った。11センチでの観測だった31日よりは明るく明瞭に見えるが、ほとんど増光していないように思える。9.2~9.3等星と等光。9.0等星よりは暗い。コマは小さめで、集光はある。尾はよく分からない。あるかもしれない、という程度。

m1=9.2 , DC=4-5 , dia=3' (20.3T10 x62)

2012S1_005.png

C/2012 S1 ( ISON )
IIIYYYYMnL YYYY MM DD.DD eM/mm.m:r AAA.ATF/xxxx /dd.ddnDC /t.ttmANG ICQ XX*OBSxx
   2012S1  2013 10 30.80 xB  9.3 TJ 11.0M 9  40   3    4            ICQ XX AIKxx
   2012S1  2013 11 04.80 xB  9.2 TJ 20.3T10  62   3    4/ ?         ICQ XX AIKxx

5日の時よりも明らかに大きく成長している。9.3等級以上はあり、8.3等星と比較出来る明るさ。薄明後であったが5センチ7倍双眼鏡でも微かな光斑として見ることが出来た。

2012S1_006.png

C/2012 S1 ( ISON )
IIIYYYYMnL YYYY MM DD.DD eM/mm.m:r AAA.ATF/xxxx /dd.ddnDC /t.ttmANG ICQ XX*OBSxx
   2012S1  2013 11 07.80 xB  8.6 HV 20.3T10  62   3    4/           ICQ XX AIKxx

2012S1_007-editPosi.jpg

8日と比べて明らかに増光している!星図に記した8等台の比較星光度がムダになってしまった。近くの6.86等星と比較出来る明るさで、それよりわずかに暗い。集光が強く、核付近はよく輝く。微かに尾もわかる。

5センチ7倍双眼鏡では、わずかに拡散したほぼ恒星状。6.9~7.0等級程度。

2012S1_008-editPosi.jpg

m1=6.9 , DC=6 , dia=3' , tail=10' /300° (11.0M9 x40)

昨日の明るさは、バーストによるものだったらしいので急遽今朝も11センチにて再観測。しかし、昨日とあまり変わらない。ただ、集光は依然として強い。11センチでも尾がわかる。近くの6.71等星よりはわずかに暗い。

5センチ7倍双眼鏡でもほぼ恒星状。近くに8等星が2つ見える。星図上の6.43等星が存在しなくて混乱した。

2012S1_009-editPosi.jpg

まず、双眼鏡で彗星の方向に向けて「!」となった。明らかに5等級以上ある。星図には6等級以下の比較星の光度しか書いていなかったが、唯一「ここまでは明るくないだろうけど」と思ってメモしておいたψVir=4.76等と比較出来るほどの明るさ。その南に5.59等星があるが、それとは問題にならない明るさ。ψVirよりわずかに暗い4.8~4.9等星。明るくなったおかげで、コマの性状が分かるようになった。尾もうっすらわかる。

Nov.15.830UT m1=4.9, DC=7, dia=5', tail=0.5°/290° (5.0Bx7)

20センチでは、コマの輝きが著しい。尾が明瞭に見え、この彗星の観測以来初めて美しく感じた。パンスターズを超えてくれるかも?核付近の輝きも素晴らしいが、206倍に上げても核は微星状であまり大きくはなかった。わずかに不安材料といえばこれだけ。

15.833UT m1=-, DC=6-7, dia=2', tail=20'/290° (20.3T10 62x)

2012S1_010-editPosi.jpg

16日朝に、バーストのピークを迎えてから中2日での観測。双眼鏡5センチ7倍では、わずかに減光したように見える。集光は強く恒星並みだが区別はつく。満月下にもかかわらず尾がわかる。光度は5.21等、5.27等星と同じで5.03等星よりは暗い。大気減光補正をして5.1等とした。

18.842UT m1=5.1, DC=8, dia=-, tail=0.5° (5.0B7x)

11センチ望遠鏡では、集光が強くよく輝く。満月下だが尾が明瞭でコマは小さい。

2012S1_011-editPosi.jpg

4時30分過ぎに双眼鏡で探した時、最初は見つからず焦ったが、高度が上がるにつれ、急速に見やすくなった。前日比較星に使った5.03等星よりも(彗星高度が下がったのに)明るく見える。4.7等星2つと同じか、わずかに暗い程度。大気減光補正して4.5~4.6等か。尾も双眼鏡でわかり、恒星と区別しにくいほど集光。

19.84UT m1=4.6, DC=8, dia=-', tail=0.5° (5.0B7x)

11センチ望遠鏡でも強く集光し、昨日よりも輝きが増しているように思える。206倍125倍でも見たが、恒星状の核はわからない。また、分裂している様子もわからない。

2012S1_012-editPosi.jpg

双眼鏡(5センチ7倍)で、昨日よりさらに増光して見える!最初に視野に入れた時、どの恒星だろう?と思うほど集光していた。4.18等星よりわずかに暗いか、同程度。大気減光補正は0.1等級(彗星を明るくする)。尾もわかる。この明るさなら肉眼でもいけるかと思い、挑戦したが無理だった。20.844UT m1=4.2, DC=8, dia=-', tail=? (5.0B7x)

11cmでは昨日とあまり変わらないが、中心はよく輝く。

2012S1_013-editPosi.jpg

さらに増光している!5センチ7倍双眼鏡では、水星から大体の位置に向けると3等の恒星がまず見え、それが彗星だと気付く。尾は微か。光度はμVir(3.87等)より0.3等ほど明るい(大気減光補正0.1等)。近くの4.93等星より1等以上明るい。また、昨日の4.18等星よりも明るく、3.4~3.6等級か。

21.844UT m1=3.5, DC=8-9, dia=-', tail=0.5° (5.0B7x)

11cm望遠鏡では、スケッチ上ではあまり変わらないが、内部の輝度がさらに増している。

2012S1_014.png

水星、彗星ともに高度を下げ、5時10分以降になってようやく昇ってきた。

5センチ7倍双眼鏡によるスケッチを試みた。同視野に彗星と水星が入る。彗星は昨日よりも暗く感じられる。が、土星近くの2.75等星よりは明るい(5時30分現在)ので、大気減光による影響かと思ったが、次第に2星の光度差が逆転した。3.25等星(πHya)と2.75等星(αLib)と高度差を考慮に入れて慎重に計算すると、残念ながら昨日よりも暗い3等台後半のようだ。ただ、薄明によってコマの輝きが埋もれ、低く見積もっている可能性は高い。集光度は高いが、明らかに恒星とは異なる。

5時39分ごろに一時的に見やすくなったが、高度が上がったためかもしれない。

22.854UT m1=3.7, DC=8-9, dia=-', tail=0.5° (5.0B7x)

今朝もいつもどおり起床して、待機したが、見えない!?地平線付近は靄がかかっていて昇りたての水星の輝きは弱々しかったが、少し上がると見やすくなった。ついで、5時20分ごろ(太陽高度-13度)に土星、(高度1.5度)そして2.7等星のαLibが見えだした。双眼鏡でその右にあるはずの彗星を探したが一向に見つからない。11センチ望遠鏡でも、αLibより1度下にあるのでその右側(倒立像なので左だが)を何度も探してみたのだが、やはり見つからない。αLibの伴星(5等星)まで見える空だったのに。薄明が迫ってから、いつもとあまり変わらない(良好な)透明度だとわかった。気温マイナス1.0度。

結局6時頃(太陽高度-5度)まで探したがついに見つけることは出来なかった。4等以下。消滅してしまったのだろうか?5等だったら見逃していたかもしれない。

(追記)ついったーで、αLibとともに写るアイソン彗星を撮影した方がいたので、完全に消滅したわけではなさそう。しかし、崩壊は始まっているのかも。

C/2012 S1 ( ISON )
IIIYYYYMnL YYYY MM DD.DD eM/mm.m:r AAA.ATF/xxxx /dd.ddnDC /t.ttmANG ICQ XX*OBSxx
   2012S1  2013 11 23.86 xI[ 3   HV  5.0B     7                     ICQ XX AIKxx
   2012S1  2013 11 23.86 xI[ 4   HV 11.0M 9  40                     ICQ XX AIKxx