1948年に発見された歴史のある彗星です。彗星名のカナ表記はブレが大きく、ウィルタネン、ビルタネン、ワータネンなどと表記されています。過去の文献ではビルターネン、ウイルターネンなどの表記も見られます。
私が初めて見たのは2008年の出現でした。光害の強い夕空での出現で、あまり良く見えた印象はありません。9等級の小彗星として見えただけです。5個の私の観測からはH20=9.3の標準等級が得られました。COBSの報告値ではもう少し明るく、8等台の報告も多かったようですが、集光度はDC=3~4と拡散気味でした。
2013年の出現は、太陽の向こう側にあったため、地上からはほとんど見ることが出来ませんでした。
2018年の出現では12月に近日点を通過し、地球に0.07auまで大接近しました。この彗星としては発見以来最高の観測条件で、前後100年を見渡してもこれ以上の接近はありませんでした。
11月初旬にはまだ夕方の南の低空にあり、拡散した9等以下の淡い姿でしたが、急速に北上し、12月中旬には天頂付近で見上げることになりました。肉眼では4等級程度のかすかな姿でしたが、双眼鏡では拡散した大きなコマがわかりました。接近前は、小彗星が大きく見えるだけの平凡な姿かと思い期待していませんでしたが、望遠鏡で中心部をじっくり観察すると、コマの中に小さな尾が伸びる面白い姿を楽しめました。
接近後は夕空にまわり、さらに拡散したため、私の観測は2月の9等が最後になってしまいました。実はその後も1~2回眺めましたが、天候が悪くなってしまいました。
今後、2024年の回帰は太陽の向こう側で見ることはできません。2029年の回帰では10月に近日点を通過し、夜明け前の空に10等級程度で見られるかもしれません。