しし座流星群の母天体として知られている。1993年から、大流星群となった2001年まではほぼ毎年この流星群も眺めてきたが(今はサボっている)、同時にこの「テンペル・タットル彗星」の方にもかなり興味があった。待ち望んだ出現だったが、残念ながら初観測から最終観測まで、拡散した見えづらい姿に終始した。
各種文献には、この1998年の回帰では最大7等級に達したとされているが、実際のところは非常に拡散して(少なくとも私には)9等星程度にしか見えなかった。地球に接近したために(1998年1月17.5日に0.36au)コマは大きかったものの、近日点前で拡散していたせいかに非常に見えにくかった。近日点通過は2月28日だったが、低空に移動してしまい、その3週間前が最終観測になってしまった。
当時のスケッチにはその時「初観測」とした1998年1月19日以前にも、「自信はないがとりあえず描いておいた」スケッチが3枚あった。光度もそれ以降の確実な観測の光度式と連続せず(明るめに見積もっていた)、錯覚か何かだろうと処理して観測報告もしていなかった。また、当時持っていた最も詳細な星図は9.5等までのウラノメトリア星図だったで、スケッチした微星と彗星の相対位置を確認する術がなかった。このたび記事を書くに当たって、その3枚のスケッチの彗星・恒星の配置と時刻をGuide9.0で再現したところ、1月5日と7日の2枚のスケッチは確かに彗星を描いたものであることがわかった。
光度は、1998年1月5日から2月8日までの8観測からm1 = 9.93 + 5 logΔ + 21.4 log r。1月19日以降の6観測ではm1 = 9.64 + 5 logΔ + 28.8 log r。
33年周期のこの彗星の次の回帰は2031年5月20日。同年2月25日地球に0.79auまで接近する。Guide9.0を起動させたところ「近日点通過2031年~」と出てきた。ついこないだの出来事だと思っていたが、なんと既に遠日点を過ぎていたようだ。2031年の回帰は条件が悪く、前記の光度式並みなら1ヶ月前に夕空で12等級で見えるようだ。