小惑星(264)LibussaによるTYC 6815-02807-1(10.6等)の食(減光)

Occult Watcherによると、当地で14.2%の確率で減光が予報されていた現象です。この冬はあまりに天候が悪いのと運も悪さもあり、まだ1度も減光・・・それどころか、観測自体が行えていません。先月のトロヤ群小惑星(1867)Deiphobusによる食では、せっかく晴れたのに木陰に隠れてしまいました(見えていれば減光していたはず)。今月5日の(212) Medeaによる11等星の食も曇り。ですが、ここに来てようやく冬型の天候が安定し観測に臨むことができました。

薄明開始後の現象で似たような観測があったと思い返して調べてみると、2010年12月に起きた(566)Stereoskopiaによる10等星の食が、恒星の明るさ、高度、薄明進行度などあらゆる点で似通っていることに気づきました。この時は運良く減光をキャッチできています。そんなこともあって、なぜかきっと減光するはず!というまったく根拠のない確信を持っていました。

2つの彗星観測を終え、5時半前には望遠鏡を対象星の方向に向けることができました。星は、幸い十分な明るさがありますが、進行しつつある薄明にどこまで耐えられるか。317倍の10分の視野では、対象星の左下にわずかに暗い10等星があり、シーイングでぼやけて見えています。ピントがわずかでもずれると見失うので慎重に監視。背景が次第に白んでくるのがわかります。

録音機(古い携帯)での録音をスタート。コードレス電話で117にかけて時報を流しつつ、ストップウォッチを持った右手を目のそばに添えて、街灯からの明かりを防いだ体勢で観測を開始しました。

星像は比較的安定してるとはいえ、一瞬気流で揺らぐことがあります。時報では5時45分20秒・・・(予報時刻の27秒を過ぎ)、45分30秒のアナウンスが流れ、そのすぐ後に、星像がぱっと消えました。「!?」本当に消えてしまった!と思い、すぐにストップウォッチのボタンを押すも、あっという間もなく明るさが戻ってしまいました。もしかすると0.5秒もない?端がかすったのかもしれないと思いつつ、この後1分程度監視して観測を終了しました。

さっそくストップウォッチの画面でラップタイムを確認すると、意外にも1.321秒の表示。予報(2秒)よりやや短い程度でした。短く感じたのは、ボタンを押した瞬間(消えるのを見てから押すまで0.6秒かかる)から、復光を目撃するまでの間が0.7秒しか無いことによるものかもしれません。

20160211.JPG

去年3月以来、約1年ぶりの減光観測となりました。以下、JOIN報告文より抜粋。

今朝の小惑星(264)Libussa(14.4等)によるTYC 6815-02807-1(10.6等)の食で、減光を観測しました。

明け方の薄明迫る中での観測でしたが、対象星の10等星は明瞭でした。
減光開始・終了ともに瞬間的でした。あまりに短い時間(体感的には1秒未満)に感じましたが、
後に確認すると継続時間は1.3秒あったようです。
減光を確認し指でボタンを押した直後(反応時間約0.6秒)に、明るさが戻ってしまったからだろうと思います。

観測条件としては、恒星の明るさ、高度、薄明の進行具合、時刻等が、
5年前の(566)Stereoskopiaによる食([JOIN:12404]で報告)と非常によく似ていて、
それを連想しましたが、今回の方が恒星は見やすく感じました。

観測地と、観測地の経緯度と標高
   埼玉県坂戸市内
   東経139°26' 50.18"、北緯35°56' 57.13"、標高21.6m 
  [経緯度・標高は国土地理院地図閲覧サービス(ウオッちず)による] 
観測開始と観測終了の時刻
    2016年2月11日5時43分20秒~5時46分30秒(JST)
減光観測の有無
  減光あり(確度4/5)
  減光開始 5時45分31.8秒(±0.3秒)
  減光終了 5時45分33.1秒(±0.3秒)
   反応時間として開始・終了ともに0.6秒を補正済み。
時刻保持の方法
  固定電話の117時報とストップウォッチによる。
観測方法・機材
    ミード製 LX90-20 (20.3cm F10シュミットカセグレン経緯台・自動追尾)
  +SP6.4mm(317倍・視野10分)による眼視観測
天候・観測条件
  快晴(雲量0/10)、透明度4/5、シンチレーション2/5、薄明進行中(太陽高度-10度)。

[JOIN:16353] (264)Libussaによる10等星の食(減光@坂戸)2016/02/11/19:09

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