天体スケッチが出来るまで(彗星編)

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天体スケッチが出来るまでです。あくまで私はこうやって書いている、という紹介です。天体スケッチ描画講習とか大それた事をいうつもりはありません。彗星編と書きつつも、他のバージョンを更新する予定はありません。

スケッチ用紙・筆記道具。

天体スケッチを描き始めた頃、最初の1年程度はコピー用紙に描いていましたが、薄い紙では保存が利かないと思い、すぐにケント紙に変えました。

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現在使っているのは、石鹸でも9人組でもないミューズの無地の原稿用紙。B4サイズのものをB5にカットして使用しています。筆記具はシャープペンシルで、0.5ミリと0.9ミリを使い分けています。濃さはBから2Bの濃いものが好みです。鉛筆はたまに使っています。三菱鉛筆のHi-uniが粒子が均等で良いようです。

描いた星雲をぼかすためには「擦筆」が便利です。固いものと柔らかいものの2種類持っていますが、固い方が細かい部分の描画が出来て重宝しています。これは世界堂で100円程度で売っています。消しゴムは普通のモノです。最近購入したシャープペンシル付属の消しゴムが意外と使える事に気づき、最近ではこれも重宝しています。写真のMONO消しゴム柄のシャープペンシルがそれです。さすが、消しゴム柄だけのことはあります。

スケッチフォーマット。

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スケッチ用紙のフォーマットは、自分用に記載内容をカスタマイズしたものを作成し、コピーして使っています。記入事項があらかじめ印刷で入っていれば、日時や使用機材等の記入漏れを防ぐことができるからです。視野円を印刷せず、画材店で購入出来るテンプレートを使って鉛筆で描いていた時期もあります(直径8cm。双眼鏡は10cm)。フォーマットは手書きからワープロ文字、そして今はパソコン印字へと時代の移り変わりを感じます。

スケッチを描く。

スケッチを描いているところを、実際にリアルタイムで撮影しました。2015年2月13日のC/2014 Q2ラヴジョイ彗星のスケッチです。

P1190072.jpg20:14。100円ショップで売ってるバインダーでとめて、やはり100円ショップで売っていた赤色LEDで照らしています。最近はLEDが白色になってしまい、代替品がないのが残念です。彗星は、望遠鏡で自動導入できますが、明るい彗星でも必ず紙の星図にプリントアウトして観測時に持参します。これは光度観測のためです。

P1190073.jpg20:17。彗星を視野の中心に描き、その周りの明るい星の位置を決めます。彗星の移動が早い場合は、別の恒星を中心に置きます。周辺の星は中心からの距離、位置角をじっくり観察しながら描きます。これは結構重要で、時間があれば何度でも修正します。この位置を足がかりにして他の星も描画するため、少しでもずれていると最終的にスケッチもゆがんでしまいます。

P1190074.jpg20:21。ある程度描けてきました。

P1190079.jpg20:44。微星も描けました。明るい星は、より大きい丸で描きます。当たり前かもしれませんが、明るい星ははっきりと黒く大きく、微光星は小さい丸でメリハリをつけて描くともっともらしく見えます。星はできるだけ円形に丁寧に描くときれいに見えます。また、視野の中心から端まで、均一に、見える星はできるだけ省略しないで描くことにも気をつけています。時間のない時は、描く星の光度の下限を決めておき、例えば11等級以上は全部描くようにしています。中心だけ微光星を描いて、視野の端の星を省略すると貧相になってしまいます。視野の端まで全体に星が散らばっている方がきれいに見えます(と思っています)。また、視野の外にも星を描いておくと広がりを感じることができます。例えば、昔描いたM44のスケッチの一番下(1986年10月6日)がヘタクソに見えるのは、紙の汚さもありますが、これらのノウハウを掴む前だったからです。

皮肉な話ですが、大抵の場合、彗星本体よりも周りの恒星に費やす時間の方が圧倒的に長いです。人によっては、あらかじめコピー星図を用意して、その上に彗星のみを描く方法をとっているようです。その方が短時間でよりよく彗星を観察出来る利点がありますが、私は、見えたものはすべて自分の手で描きたいと思っています。

P1190081.jpg20:46。ようやく彗星に着手。この日は時間があったので周りの恒星に30分も掛けられましたが(写真を撮る余裕もあった)、急いでいる場合は恒星の描写を1、2分で済ませなければなりません。彗星本体は、濃いめ・太めのシャープペンシルでとりあえずグチャグチャ描きます。状況にもよりますが、この日はこの時刻を観測時刻としました。

P1190082.jpg20:47。ひたすらグチャグチャ描きます。

P1190083.jpg20:47。擦筆で大まかに整えます。結露がひどい時は擦ると紙が傷むので、室内に戻ってから行います。恒星状の中心核がぼやけることも多いので、その時は再描写します。

P1190086.jpg20:57。書き漏らした微星がないか見回し、コマ視直径を星の角距離を利用してメモ。補足事項を描いて、こんなもんかな、と終了。あとは部屋に戻って描きます。

P1190093.jpg20:58。こんな感じでした。

P1190097.jpg22:26。ここから先は室内作業です。

P1190098.jpg22:30。星図ソフト等でコマ性状その他を算出して記入。最近は楽にこの作業を行うために、ブラウザ上で彗星の位置推算等やICQ報告フォームの作成が行えるJavascriptを組みました。

P1190101.jpg22:43。文章を書いて完成。

以前はここまででしたが、今はブログ更新まで行っているのでさらに続きます。

P1190102.jpg22:45。画像ソフトで北を上にして編集。

P1190103.jpg22:47。画像にタイトルなど文字を入れる作業もブラウザ上で行えるように(楽をしたいので)、HTML(canvas)とJavascriptを組みました。

P1190105.jpg23:01。ブログ更新。記事が掲載され、無事すべての作業が終わりました。

IMG_5552.JPGスケッチは押し入れに雑然と収納されています。

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