2014年12月25日未明におきた現象で、1年ぶりに減光をとらえることが出来ました。OccultWatcherによると、時刻は3時49分21秒±6秒。恒星光度10.8等、小惑星11.9等で減光幅1.4等、継続時間は6.2秒。確率は当地では49.1%という高確率で、この冬の最大値です。ところで、星図ソフトで念のため確認すると、恒星が暗く減光幅が1.1等しかない可能性も。そのため、ふだんは星図のプリントアウトは1枚で済ませていますが、今回は広範囲と詳細星図との2枚を用意して臨みました。
3時過ぎに起床。無事透明度よく晴れています。もし通過観測になった場合はそのまま星雲星団スケッチ→ボリソフ彗星(C/2014 R1)観測と続けるつもりだったので、スケッチ用紙とプリントアウト星図を持参。望遠鏡を持ち出して対象星に向けると、最低倍率でも見やすい恒星をすぐに見出せました。街灯の明かりがジャマですが、監視にはまったく問題ありません。最低の62倍でも良かったのですが、減光幅を考慮して倍率は100倍まで上げて予報時刻まで待ち構えます。
3時45分からは電話で117に繋いで待機。そして徐々に予報時刻が近づいてきます。47分、48分・・・と、ここで新聞配達のバイクが。もちろん目は向けられませんが、すぐ近くをライトを点けながら通り過ぎる気配を感じます。そうしているうちにも49分10秒・・・もうすぐ予報時刻です。バイクは去りつつありますが、気を取られてなかなか集中出来ません。そして20秒の時報。いつ光度が減ってもおかしくありません。対象星に目を凝らしたまま迎える30秒の時報。誤差6秒だったので、もう過ぎてしまったのかも知れない。今回もダメだったか、と思った瞬間、星の明るさがゆらぎ始め、減衰振動するように消えてしまいました。「消えた!」とストップウォッチのボタンを押しながら思います。いや。完全には消えず、わずかに小惑星の明るさが残っています。思ったよりもはっきり消えてくれて良かった。そして、明るさが戻りました。
そのまま3時51分まで監視を続けて、終了。すぐさま、ストップウォッチの画面をメモ。直前とのラップタイムは4.581秒。予報よりも短い。ボタンを慎重に押して(過去に押し間違いでデータを消してしまったことが2度ほどあります)他のタイムも転記。さらに、自室へすぐに戻って、固定電話の117にかけてストップウォッチの「時差」を求めます(時刻がわかります)。個人差も算出してメール報告文をまとめるまで、結局1時間近く掛かってしまったようです。
そして、4時40分過ぎ、ボリソフ彗星観測のために再び外に出ました。以下は観測報告文(一部抜粋)。
今朝の小惑星(124)AlkesteによるTYC 1323-01648-1(10.8等)の食は、約4秒間の減光を観測しました。 対象星は明るく、容易に見ることが出来ました。 予報では減光幅が1.4等程度と小さく、さらに星図ソフトで調べると恒星光度が11.3等しかなく、 減光が捉えにくいことも想定していましたが、実際には減光時は(わずかに小惑星の明かりが残ったものの) ほとんど消失に近い状態で、ストップウオッチを押すタイミングに迷いはありませんでした。 減光開始時には、一瞬で消えるのではなく、少しふらつきながら消えていったように見えました。 恒星出現時も、開始時ほどではありませんが、わずかに時間がかかったように思います。 観測地と、観測地の経緯度と標高 埼玉県坂戸市内 東経139°26' 50.1"、北緯35°56' 57.0"、標高21.6m [国土地理院地図閲覧サービス(ウオッちず)による] 観測開始と観測終了の時刻 2014年12月25日3時47分00秒~3時51分00秒(JST) 減光観測の有無 明瞭な減光を確認(確実度5/5) 減光時刻 減光開始 3時49分31.1秒(±0.3秒) 減光終了 3時49分35.8秒(±0.3秒) 個人差は、開始時刻に0.6秒、終了時刻に0.5秒を補正済み。 時刻保持の方法 固定電話の117時報とストップウォッチによる。 観測方法・機材 ミード製 LX90-20 (20.3cm F10シュミットカセグレン経緯台・自動追尾) +PL20mm(100倍)による眼視観測 天候・観測条件 快晴(雲量1/10)、透明度4/5、シンチレーション3/5。
[JOIN:15495] 小惑星(124)Alkesteによる10等星の食(減光@坂戸) 2014/12/25 4:41