2018年12月11日5時過ぎに予報されていた現象です。高度30度以上にある広角の7等重星の一つが隠されるもので、薄明開始直後のほぼ暗夜。月明かりもなく、今年屈指の好条件です。しかも、冬晴れの多い12月となれば期待しないはずがありません。
しかし、今年は例年になく天候不順。この日の夕方も雲が広がって諦めかけていましたが、夜半には快晴に。仮眠を取って4時過ぎに起きると、見事な星空が続いていました。
さっそくいつものように望遠鏡をセット。前日、電池切れが発覚して急遽入れ替えたストップウォッチも用意して準備は万端です。目的星の方向に街灯がありますが、星が明るいので問題なし。
そして、自動導入で望遠鏡を向けた先には、・・・重星が2組。一瞬戸惑いましたが、星図で確認すると明るい方の重星だとわかり、そちらに向け直し。
5時25分過ぎから監視開始。監視中、本当にこの重星で良いのか?と不安になりましたが、今さら見直すわけにはいきません。時報が聞こえる中、予報時刻の27分30秒が過ぎ、すっとゆっくり恒星が消えました。低倍率なので、13等の小惑星は見えません。良かった、間違ってなかった。と思いながら、この消えている時間が長く感じます。40秒のアナウンスが聞こえ、しばらくして明るさが戻りました。こちらも瞬間的ではなく、小さい光点が、風船が膨らむように復光しました。
自室に戻って、電話で117にかけてストップウォッチでラップを測り時刻を確認。毎回観測直後に見積もっている(※)、いわゆる個人差は0.4秒~0.8秒の間に収まっていたので0.6秒としました。誤差±0.2秒ですが、報告時は安全を見て±0.3に(※ストップウォッチの液晶を消える恒星に見立て、液晶表示が変わる瞬間にボタンを押す方法)。
好条件で天候も良かったため、ツイッター上や、MLでも多くの報告が寄せられています。整約結果がたのしみです。
以下追記(2018年12月31日)。
この現象では、各地で段階的な減光、増光が記録され、恒星がほぼ等光の重星であることが判明しました。ビデオ観測ではその様子が捉えられましたが、眼視観測では、潜入時は2星が完全に消えたタイミング、出現時は1つ目の星が現れたタイミングを捉えていたものと解釈すると、うまく小惑星の形状が説明できるようです。潜入、出現に時間がかかった気がしたのは、気のせいではありませんでした。恒星に関しては、まだ未解明の点があり(主星がさらに重星である可能性など)今も議論が続いています。
- 整約図は広瀬敏夫氏(2018/12/21 22:23配信[JOIN:18617])によるものです。一部の眼視観測者の"個人差"に微小な修正が加わっています。
- 早水勉氏による記事が http://www.hal-astro-lab.com/data/occult/1812caprera.html (HAL星研)にあります。
(追記ここまで)
記事の続きにて、観測報告文(抜粋)。
今年の冬はほとんど星空に恵まれず、今日の件名の現象も心配でしたが、
見事に晴れ渡り、最高の条件のもとで減光を捉えることができました。恒星は明るく、監視には申し分ない条件でしたが、
倍率が低かったため、減光時に小惑星は見えませんでした。減光は、瞬間ではなくわずかに時間がかかったような気がします。
また、復光の方も(減光時ほどではないが)ほんの僅かに時間を要したようでした。ツイッター上でも、複数の方が減光を捉えたとツイートされていますが、
みな、減光が瞬間的ではなかったとしているのは興味深いことです。■小惑星(479)Capreraによる7.7等星HIP 33753の食
観測地と、観測地の経緯度と標高
埼玉県坂戸市内(Sakado,Saitama)観測開始と観測終了の時刻
2018年12月11日5時25分20秒~05時30分00秒(JST)減光観測の有無
潜入 5時27分37.5秒(±0.3秒)(個人差0.6秒補正済み)
出現 5時27分47.1秒(±0.3秒)(個人差0.6秒補正済み)
※ストップウォッチ上のラップタイム(継続時間)は9.646秒時刻保持の方法
ストップウォッチによる。直後に固定電話(IPではない)の、NTTの117時報とのラップタイムの差を計測。
※別途、ストップウォッチの電子音と117時報(コードレス電話)の同時録音で、1秒単位の時刻を確認。
観測方法・機材
ミード製 LX90-20 (20.3cm F10シュミットカセグレン経緯台・自動追尾)
+PL32mm(62倍・視野50分角)による眼視観測天候・観測条件 透明度4/5、シーイング3/5、雲量0/10
以上。
件名:[JOIN:18583] (479)Capreraによる7.7等星の食(減光@坂戸)2018-12-11 19:34