彗星核の形状と光度の関係?

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ハレー彗星が接近した時、ジオットが撮影した彗星核の様子にはとても驚いたものです。あれから30年近く経ち、ハレーを含めて今日までに6個の彗星核の様子が明らかになりました。現在はESAのロゼッタによる67Pの接近観測も継続中です。

ところで、彗星核の写真を並べてみると、大ざっぱに言って球形に近いもの(81P、9P)と、いびつでピーナツ状や棒状に近いもの(1Pなど)の2つのパターンがあるように見受けられます。

0001Pnucl.jpg 1P/ハレー彗星(ヴェガ2号撮影・ソ連)
改めて説明の必要もない大彗星です。ジオットが撮影した棒状の写真が有名ですが、角度を変えるとピーナツ状のようです。
1986年の回帰の時は、近日点後に尾が発達しさらに明るく見えました。
0009Pnucl.jpg 9P/テンペル第1彗星(ディープインパクト撮影・NASA)
史上初めて探査機が着陸(激突)した彗星です。ジャガイモ状で、どちらかというと球形に近いようです。
2005年に私が観測した時は、探査機衝突後、近日点後も明るく見えると期待しましたが、逆に見えなってしまいました。
0019Pnucl.jpg 19P/ボレリー彗星(ディープスペース1撮影・NASA)
典型的な木星族彗星です。明らかに棒状の核です。
私の1987年、1994年の観測では、近日点前に急増光して通過後に明るい状態が続くタイプの彗星として見えました。
0067Pnucl.jpg 67P/チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星(ロゼッタ撮影・ESA)
地上からの推定ではいびつな1個の塊でしたが、実際は2つの天体がくっついたようなピーナツ状でした。
私は観測したことがありませんが、近日点通過後に明るくなるタイプのようです。
0081Pnucl.jpg 81P/ヴィルト第2彗星(スターダスト撮影・NASA)
史上初めて小天体サンプルリターンの対象となった天体。ややいびつな球形のようです。
私は1997年と2010年の2回観測しましたが、全体的には近日点前の方が明るく観測出来ました。
0103Pnucl.jpg 103P/ハートレー第2彗星(EPOXI=ディープインパクト撮影・NASA)
新鮮な彗星で、上記の彗星より一回り核のサイズが小さいようです。2つの天体がくっついたようなピーナツ状です。
私は1991、1997、2010年の3回観測しましたが、いずれの回帰でも近日点通過後に光度のピークを迎えました。

彗星核の写真を見ながら、その彗星についていろいろと思い出していたところ、あることに気づきました。核がピーナツ状の彗星は、近日点通過後に増光するタイプで、球形の彗星はその逆ではないか?ということです(表のうち、背景色を水色にしている2彗星がほぼ球形の彗星です)。最初に気づいた時は1P、19P、81P、103Pの4彗星だけを思い浮かべていたのですが、あとで思い出した9Pでも当てはまっていました。そして67Pでも変光パターンは当てはまっている模様です。

もちろん、サンプル数がわずか6なので「単なる偶然」という可能性は充分あります。そもそも(回帰ごとに)光度パターンが違うよ、というツッコミもあるかも知れません。しかし、物理的に説明出来そうな気もします。このただの思いつきの関係が本当に正しいかどうかは、今後の彗星探査を一生がかりで待ちたいと思います。

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