2005-12-27小惑星(485)Genuaによる10等星の食(減光)

(※この記事は当時の記憶を思い出して書いたものです。2006-01-01。)

2005年12月27日21時ごろ起きた小惑星(485)GenuaによるTYC 4836-00860-1(10.6等星)の食のレポです。この現象では約5秒間の確実な減光を観測しましたが、結果をめぐって色々ありました。

この日も12月以来毎日続いている晴天。ただ今までと違って、わずかに低空に雲があり、ちょっとだけ心配です。今日は現象の観測はもちろんですが、ついでに土星の衛星も見るために2種類の星図を用意しました。

夕食後、望遠鏡のセッティングを始めました。セッティング終わり、いざ電源を入れると。。。電源が入らない。嫌な予感がよぎります。以前モーターが焼けて修理に出したことがあるので。しかし、再度入れなおすと、無事赤ランプが点きました。しかし今度はコントローラーの表示画面が出ない。こちらの方は時折あるので、また電源を入れなおして3度目にようやく起動できました。

目的星を導入する段になってまたしても、星図に目的星の位置が書かれていないことに気づきます。前と同じ失敗をしてしまうとは。時間的に余裕を持っていたので助かりました。

録音をスタートさせ、携帯電話の117を鳴らし、いつものように監視開始です。今回の目的星はやや暗いとはいえ、監視するには充分な明るさ。気流により0.1秒単位の微小な明滅があり、場合によっては減光と勘違いしそう。

117を聞きながら予報時刻と思っていた22分後半が迫ってきました。今回はなぜかいつも以上に心臓のドキドキが激しい。

「23分ちょうど」の時報が鳴った時『ああ、今日は起きないかも』という思いが一瞬頭をよぎり、少し落ち着きました。しかしです、その数秒後に目的星の明るさが一気に落ちました。『コロニスの時よりは時間が掛かってるな』と思いながらストップウォッチを押しました。しかし目的星は見えています。小惑星の光度である11.5等星になったことはすぐにわかります。

減光中も脳内でカウントしていました。1秒、2秒・・・

その後、暗くなっていた目的星(小惑星の)明るさが揺らぐように思えました。光度変化は、階段状というよりは曲線的に感じました。[減光中→増光→再減光→増光]のような変化で、もしかするともう1回増減光があったかも知れません。

一瞬戸惑い、気がつくと目的星は元の明るさに戻っていました。つい声をだし、そしてストップウォッチも押しました。今月2回目の成功と、『ああ、ちょっと遅れたかな』と後悔の念が入り混じりながら、今度は目をアイピースから離さずにじっと凝視しました。1分ぐらい過ぎてようやく目を離しました。時計を見ると『5.82秒』。予報の9秒よりは短い。直感的に『これは南限界線に近いかも?』と思いました。だとすると、出現時に見えた光度の揺らぎは、小惑星の山々で明滅して接食状態になったためか?月による接食でさえ見たことないのに皮肉なものだ。と勝手な妄想を繰り広げながら引き上げました。

HDD録音は入れっぱなしで、今度は自宅に急いで戻って固定電話117に掛けます。携帯117と同時に録音することで携帯と固定の時刻差がわかり、時刻算出の参考になるからです。しかし、電話を掛け終わって気づきました。なぜかHDDの録音がストップしている。確かに電池残量は少なかったけど、たかが10分でなくなることはないだろうと思っていたのが裏目に出てしまいました。ただ、結果的に現象中は録音が行われ、その後にストップしたらしいので時刻算出への影響がなくて幸いでした。

まずストップウォッチで時刻を求め、ついでMP3録音から時刻を求めようとしたのですがなかなか良い値に決まりません。結局1時間以上もチラシの裏で悩んでしまいました。


観測の概要

観測地と、観測地の経緯度と標高,測地系
埼玉県坂戸市内 139o27'02"、35o56'45"、21m 国土地理院1/25000地形図より(日本測地系)
観測開始と観測終了の時刻
27日21時21分00秒~21時24分30秒
減光観測の有無
明瞭な減光を確認。
減光の時刻
  • 減光 21時23分04.1秒(+/-0.5秒)
  • 出現 21時23分09.3秒(+0.5/-1秒)※不正確:後述
  • 継続時間5.2秒(さらに短い可能性:※後述)
 反応差(0.7秒)を考慮。
時刻保持の方法
時計のストップウォッチ機能+117時報(固定電話)による方法と、 携帯電話の117時報を受信しながらのポータブルHDDレコーダー による録音(発声とストップウォッチの電子音)を併用。 時刻は両方の方法を考慮・加味した上で決定。 携帯電話の電波遅れ(0.17秒)も考慮済み。
観測方法・機材
ミード製 LX90-20 (20.3cm f10シュミットカセグレン経緯台・自動追尾) +15mmアイピース(133倍)による眼視観測

※今回はストップウォッチと録音を併用して時刻を決定しましたが、出現時は声を出すタイミングとストップウォッチを押した時の電子音が0.5秒ぐらい異なっていることが録音でわかりました。出現を迷った、というのもありますが。(早いほうの発声時刻を採用しました)こうなってくると、眼視観測の限界を感じてしまいますね。

ちなみに、ストップウォッチ+固定電話117のみで算出した時刻は反応差補正ナシで21時23分04.98秒、継続時間5.82秒。携帯117+発声の録音のみにより算出した時刻は補正ナシで21時23分4.7秒、継続時間5.25秒でした。

今回の現象では他の減光を観測された方で不規則な光度変化を目撃された方も多く、小惑星の形が良く求められていません。目的星が重星である・小惑星の形が変・回折が起きた、などの原因が考えられています。3つぐらいの塊がゆるく結びついた形だったりすると面白いのですが、さて。。。

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