2020年5月2日に起きた、小惑星(451) Patientia(11.6等)によるTYC 5631-00932-1(10.5等星)の食です。
恒星の明るさが10等級、減光等級も1.4等と程良く、掩蔽帯の中心付近での減光確率が100%で、大いに期待した現象でした。夕方には一時的に薄雲が広がりましたが、望遠鏡を設置する時間には晴れ渡りました。ただ、透明度は良くなく、20cm62倍では対象星はほとんど見えません。167倍以上で確認できますが、一番楽に監視できる317倍まで上げることにしました。
10分前には目慣らしも兼ねて監視開始。対象星とその隣りにあるわずかに暗い小惑星が重星のように見えていましたが、すぐにわからなくなりました。予報3分前には117に電話して時報も鳴らし始めました。iPhoneでも同時録音してます。シーイングがイマイチで、時折対象星が消えるように見えてしまうのが気がかりです。
そして予報時刻の22時50分00秒を告げる時報が。ほどなく対象星の明るさに揺らぎが。若干迷いつつもストップウオッチのボタンを押しますが、まだ明るさが残っています。今のは間違いだったか?と思うとさらに明るさの揺らぎ・・・こういうことを数回続けて、今度こそ確かな現象が確認できたと思って声を出しました(後の確認のため)。
しかしやっぱりよくわからない。そう思っていると、対象星がほとんど見えなくなりました。これに気づいた瞬間にもボタンを押しつつ、しかし、気づくと明るさが元に戻っています。混乱のまま予報時刻を過ぎてしまいました。
減光したのは確かですが、結局どのタイミングで潜入・出現が起きたのかよくわからず、煮え切らないまま監視を終えることになってしまいました。
各地の報告からは、対象星が二重星と思われることが分かってきています。最近の観測時には、そのことをある程度想定して(微小な光度変化も見逃さないようにして)いましたが、今回がそれにあたってしまったようです。眼視観測では0.7等を下回る微小減光はお手上げです。
以下記事の続きで、JOIN-MLに投稿した報告文(抜粋)です。
小惑星(451) Patientia(11.6等)によるTYC 5631-00932-1(10.5等星)の食を眼視で観測しました。 夕方には薄雲が広がりましたが、予報時刻前には晴れ渡り、なんとか見ることができました。 10分前には、星と小惑星が重星のように接近している様子もわかりました。 ただ、透明度が悪いため対象星はかすかで(監視はできる明るさ)、 さらにはシンチレーションで対象星が時折瞬間的に見えなくなるなど、 条件が悪く、正確な採時ができませんでした。 現象時刻付近も、星の明るさが変わったと判断して何回もストップウオッチを押してしまいました。 正直、どのタイミングで潜入・出現が起きたのかあまり自信がありませんが、 同時録音した音声から、潜入と出現の時刻を決定しました。 すべての押したタイミングは以下の通り(0.60秒個人差補正済み)。基本的にはシンチレーションによるものだと思います。 (22時50分) 04.30秒 06.35秒 11.39秒 14.28秒* 18.41秒++ 22.20秒+ 32.96秒** *を潜入、**を出現時刻としました。 出現**の直前は、ほとんど対象星は見えない状態でしたが、それ以前は対象星(小惑星)が見え続けていました。 ++と+の間は(シンチレーション等の影響で)わずかに明るさが戻っていた可能性があります。 1.4等級の光度差なら楽勝かと思っていましたが、案外難しかったです。。 ■小惑星(451) Patientia(11.6等)によるTYC 5631-00932-1(10.5等星)の食 観測地と、観測地の経緯度と標高 埼玉県坂戸市(Sakado,Saitama) 観測開始と観測終了の時刻 2020年5月2日22時48分00秒~22時52分00秒(JST) 減光観測の有無 確実な減光を観測 潜入 22時50分14.3秒(個人差0.6秒補正済み) 出現 22時50分33.0秒(個人差0.6秒補正済み) ※時刻は不正確。 時刻保持の方法 ストップウォッチによる。観測直後に固定電話(IPではない)の、NTTの117時報とのラップタイムの差を計測。 ※別途、ストップウォッチの電子音と117時報(コードレス電話)の同時録音で、1秒単位の時刻を確認。 観測方法・機材 ミード製 LX90-20 (20.3cm F10シュミットカセグレン経緯台・自動追尾) +SP6.4mm(317倍・視野10.0分角)による眼視観測 天候・観測条件 透明度2/5、シーイング2/5、雲量0/10。気温19度、湿度81%。月明あり。 以上。
件名:[JOIN:20093] (451) Patientiaによる10等星の食(減光@坂戸)