2014年11月9日記載。この記事の「投稿日」は現象の日に合わせています。
歴史的な天文現象であった、小惑星(381)ミルラによる2等星γGemの食です。当時、天文ガイドのコラム記事で予報の存在を知って、当日は彗星観測の合間に「肉眼で」観測を試みました。予報では、鹿児島あたりに掩蔽帯が走っていたので、まさか減光は起こらないだろうと思い、彗星に向けていた望遠鏡はそのままにしていました。ちなみに、その時試みた彗星は再発見された97P/メトカーフ・ブルーイントン彗星でしたが、この日は見つけられず、2日後に見ています。
(デジタルの)腕時計のストップウォッチを手にして待ち構えること数分、突然、星座を構成していた2等星が消滅。唖然としつつも冷静にストップウォッチのボタンを押しその様子を眺めて、星が戻るのを確認しました。すぐに自宅に戻って電話の117にかけて時刻合わせをしました(はずです)。今でも、星が1個消えた星空の不思議な感覚は覚えています。
観測した当時は初めて挑戦した現象だったため、珍しいとは言っても皆既月食や1等星の星食程度のレア度だろうと考えていました。そのため、特にどこにも観測の報告はしていませんでした。が、結局それから20年以上経った今でも「日本国内で起きた小惑星による恒星食」で最も明るい恒星の現象という地位は崩れておらず、今になってその重要性を思い知っています。肉眼で減光観測をすること自体、もう一生ないでしょう。
この体験がきっかけで、小惑星による恒星食の観測が私にとって彗星と並ぶライフワークとなりました。ただ、2回目の減光観測成功までには7年を要しました。
当時のメモ書きを発掘しました。個人差(反応差)の記載はありませんが、当時の自分も個人差の存在や、その求め方はわかっていたはずなので、補正後の時刻かもしれません(記憶にはありません)。そもそも、このメモ書き自体もどこかにメモしていた物の清書だったはずです。。
観測地:埼玉県坂戸市内 東経139度27分01.7秒 北緯35度56分46.1秒(日本測地系)21m
(国土地理院2万5000分の1地図より測定) 減光開始:20時59分51.5秒
減光終了:20時59分57.7秒(個人差補正記載なし。)
継続時間:6.16秒±0.5秒。食の前後は約0.1秒程度かけてゆっくりと減・増光
観測方法:肉眼
時刻保持:ストップウォッチ&NTTの117時報