2018年の元日・1月1日23時00分頃に予想されていた現象です。当地では掩蔽確率が99%以上あり、確実に起こると期待していました。ただ、スーパームーンと呼ばれた満月がわずか20度角にあり、オリオン座にある11等の対象星の減光幅が0.9等しかないため、眼視で捉えられるか若干の不安がありました。
夕方に少し残っていた雲もすっかり晴れ、冬晴れの下観測を開始。実際に対象星に望遠鏡を向けてみると、意外と明るく、わずかに変形して重星状に見えます。対象星と小惑星はほぼ等光です。しばらくすると2星は完全に重なって、隣の10.5等星とほぼおなじ明るさまで明るくなったように感じました。ただ、シーイングはあまりよくないため時折0.5等程度の明滅があります。
そして、予報時刻がやってきます。不意に光度が落ちたような気がして、落ち着いてストップウォッチを押します。しかし、次の瞬間、あまり暗くなってない??と思って、確かに光度が落ちたことを確認してさらにボタンを押下。減光幅が小さいため、減光中も光度がぶれると押すタイミングがありました。結局、確実に光度が戻ったと判断するまでに計5回ボタンを押していました。
結果としては明瞭な減光をとらえることができましたが、潜入・出現の瞬間の判定はかなり難しく、精度がだいぶ落ちるだろうと覚悟していました。直後に個人差(ボタンを押すまでの遅れ時間=反応時間差)を見積もりますが、ストップウォッチで試して0.4~0.9秒の幅があったので0.7秒とし、誤差を±0.4秒と大きめにとって報告することにしました。それでも当初は±1秒にするつもりでしたが。。
この小惑星は年末の(334)Chicagoに続き、多点観測に成功しており、直径160キロ程度の姿が浮かび上がっているようです。私の報告値も大きなずれはなくホッとしました。
(以下、記事の続きでJOIN-ML報告文を掲載。観測者名・観測値一部削除)
[JOIN:17869] (59)Elpisによる11等星の食(減光@坂戸)2018/1/2 0:50
今晩の小惑星(59)Elpisによる11等星TYC 0702-02653-1は、明瞭な減光を確認しました。 ただ、後述する通り、時刻の精度は劣るかもしれません。 スーパームーンのそばで11等の微光星だったため、確認できるか不安でしたが、 対象星自体は、はっきり確認できました。隣の10.5等星とほぼ同じ程度(僅かに暗い)でした。 また、減光中も確実に隣の10.5等星より暗く、区別できるものでしたが、 シーイングが悪く終始対象星の明滅があったため、潜入・出現の瞬間の判断には少々迷いが生じ、 複数回ストップウオッチを押すことになってしまいました。 1回目の減光(23時00分12.3秒=個人差補正済み)の後、「まだ暗くなってないかもしれない」と一瞬思い、 確実に減光していることを確認してもう1回ストップウオッチを押しました(2回目=同13.3秒)。 減光中に、光度がぶれたため一度押しましたが、シーイングの乱れだと思われます(3回目=同22.6秒) さらにもう1回、同じような判断で4回目を押し(同27.2秒)、 確実に光度が戻ったと判断して、5回目を押しました(23時00分29.4秒)。 とりあえず、最初と最後の時刻を報告値といたします。 ■小惑星(59)Elpis(11.7等)によるTYC 0702-02653-1(11.5等)の食 観測地と、観測地の経緯度と標高 埼玉県坂戸市内(Sakado,Saitama) 観測開始と観測終了の時刻 2018年1月1日22時57分10秒~23時02分00秒(JST) 減光観測の有無 潜入 23時00分12.3秒(±0.4秒)(個人差0.7秒補正済み) 出現 23時00分29.4秒(±0.4秒)(個人差0.7秒補正済み) ※ストップウォッチ上のラップタイム(継続時間)は17.107秒 ※ 23時00分13.3秒、22.6秒、27.2秒にも変化点あり(シーイングの乱れの可能性) 時刻保持の方法 ストップウォッチによる。直後の固定電話(IPではない)のNTTの117時報とのラップタイムの差を計測。 別途、ストップウォッチの電子音と117時報(コードレス電話)の同時録音で、概略の時刻を確認。 観測方法・機材 ミード製 LX90-20 (20.3cm F10シュミットカセグレン経緯台・自動追尾) +SP6.4mm(317倍・視野10.0分角)+天頂プリズムによる眼視観測 天候・観測条件 透明度4/5、雲量0/10。強い月明。