月食の例の青い縁。

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近年の月食で、月面に投影された地球の影の欠け際が青く見える現象が注目されているようです。ブルーバンドとか、ターコイズフリンジとか呼ばれているらしいですが、初めてその話題を耳にした時は、「何を今さら??」という感想しか持ちませんでした。

というのも、私が今まで見てきた月食で欠け際が青っぽく見えることはよくあることで、特に言及するほどでもない常識だと思っていたからです。もちろん観測条件等で見えなかったこともありました。また、青というよりは灰色に青が混じった透明感のある光、といった方が良いかも知れません。

幸い、昔のいくつかの月食についてはスケッチを残しているので、青い縁についても記録しています。今までの月食スケッチのうち、それが描かれていたものを掲載してみます。

1986年4月24日の皆既月食

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私が初めて望遠鏡で観た皆既月食です。皆既中のスケッチは残ってないので、皆既になる前に曇ってしまったか、スケッチをさぼったのかもしれません。このスケッチを含め6枚中2枚に青い縁が描かれてます。観測した当時は、影の縁が青く見える現象については聞いたことがなく、赤い影との対比のため、錯覚で青く見えるのではないかと思っていました。

1986年10月18日の皆既月食

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ほぼ全経過の21枚のスケッチを残していますが、全体的に雲がかかっていたせいか観測条件は悪く、青い縁が描かれているのはこの1枚だけです。別の皆既後のスケッチでは「縁が黄色い」と描かれていました。

1989年2月20日の皆既月食

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この月食では5枚のスケッチを描きました。そのうち2枚で青い縁を描いています。明瞭に青く見えたので「錯覚?」という表現も使っていません。なお、この時のスケッチは当時の天文ガイド編集部に送付したので(雑誌に採用・掲載はされませんでしたが・・)現物は手元になく、ここに掲載したのはカラーコピーです。

1990年2月10日の皆既月食

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この月食は雲が途中から広がってしまったため、3枚のみです。文章中ではコメントしていませんがうっすらと縁を青く描いています。しかし、次のスケッチではわざわざ「影のフチは89年のように青くはない」とコメントしています。薄雲を通すと青く見えないのかも知れません。


青い縁が描かれていたのは、1985年10月から1993年6月までの8つの月食中4つでした。他の月食は(観測条件等で)暗すぎたり食分が小さかったものばかりです。実際、青い縁を見るには空の観測条件が良くないといけないのかも知れません。

残念ながら最近は月食スケッチをやめてしまったので(1993年の次の月食が1997年で、しかも曇ってしまいました)、21世紀に入ってからの月食スケッチはありません。2000年7月16日の皆既月食のスケッチは残していませんが、欠け際について色の言及はないものの「透明感がある」とメモしていました。

その後、青い縁は2011年12月や、最近の2014年10月の月食では目撃しました。その2014年の月食では、目で見た印象に近い透明感のあるわずかに青みがかった縁(というより灰色)をiPhoneで撮ることができました。

もし1980年代以前に「青く見えた!」と主張したところで、「写真には写ってないよね、錯覚だよ」と一蹴されて終わったことでしょう。近年になって青い縁が注目されてきたのは、デジカメの普及によって、より人間の目に近い写真が撮れるようになった、という要因が大きいと思っています。少なくとも私の経験からは、21世紀になって影が青くなってきたわけではないことは断言出来ます。

今度の4月4日には本影を擦るような皆既月食が起きるようです。例年だと一時的に寒の戻りがあって冬型の気圧配置になる頃で、太平洋側では晴天が期待出来ます。ぜひ、写真やスケッチでは再現出来ない、微妙で美しい色彩を楽しみましょう。

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