46P/Wirtanen ウィルタネン彗星

2018年、地球に大接近した周期彗星

1948年に発見された歴史のある彗星です。彗星名のカナ表記はブレが大きく、ウィルタネン、ビルタネン、ワータネンなどと表記されています。過去の文献ではビルターネン、ウイルターネンなどの表記も見られます。

私が初めて見たのは2008年の出現でした。光害の強い夕空での出現で、あまり良く見えた印象はありません。9等級の小彗星として見えただけです。5個の私の観測からはH20=9.3の標準等級が得られました。COBSの報告値ではもう少し明るく、8等台の報告も多かったようですが、集光度はDC=3~4と拡散気味でした。

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2013年の出現は、太陽の向こう側にあったため、地上からはほとんど見ることが出来ませんでした。

2018年の出現では12月に近日点を通過し、地球に0.07auまで大接近しました。この彗星としては発見以来最高の観測条件で、前後100年を見渡してもこれ以上の接近はありませんでした。

11月初旬にはまだ夕方の南の低空にあり、拡散した9等以下の淡い姿でしたが、急速に北上し、12月中旬には天頂付近で見上げることになりました。肉眼では4等級程度のかすかな姿でしたが、双眼鏡では拡散した大きなコマがわかりました。接近前は、小彗星が大きく見えるだけの平凡な姿かと思い期待していませんでしたが、望遠鏡で中心部をじっくり観察すると、コマの中に小さな尾が伸びる面白い姿を楽しめました。

接近後は夕空にまわり、さらに拡散したため、私の観測は2月の9等が最後になってしまいました。実はその後も1~2回眺めましたが、天候が悪くなってしまいました。

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今後、2024年の回帰は太陽の向こう側で見ることはできません。2029年の回帰では10月に近日点を通過し、夜明け前の空に10等級程度で見られるかもしれません。

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観測記録一覧

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  • 14.61UT m1=7.8:, DC=2, dia=5' (20.3cmシュミットカセグレン 36倍)
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  • 2018年11月14日23時34分 (20.3cmシュミットカセグレン 36倍)

11月に一瞬だけ見て以来、全く晴れず2週間ぶりにまともに見ることが出来た。今期初スケッチ。極めて拡散して淡く、20cm36倍では南の低空の光害に完全に埋もれてしまっている。ただ、大きく、光度としては明るいようだ。20cm62倍でも集光は弱い。

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  • 0046P-2018_002.jpg
  • 22.60UT m1=7:, DC=2, dia=6' (20.3cmシュミットカセグレン 36倍)

満月下であまり期待してなかったが、透明度が良いおかげで、ごくかすかで大きい雲がわかる。拡散している。ピントを大きくぼかして見ると、7等星と比較できそうだが、まったく不正確。電線が邪魔。20cm62倍より36倍の方が見やすい。

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  • 0046P-2018_003.jpg
  • 08.57UT m1=5.2, DC=2-3, dia=35' (5.0cm双眼鏡 7倍)

19時に見た時は、ほとんど見えず近くの7等星がわかるだけだったが、22時には見やすくなった。ただ、ごく淡く拡散している。ただ大きい。ほとんど集光はないが、注視すると小さい集光部はある。見やすさ(見にくさ)は7等星並み。光度は5.3等星以上5.2等星以下。この時期はまったく晴れず16日ぶりのスケッチになった。すぐに薄雲に覆われ、微星のスケッチは出来ず。

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  • 0046P-2018_004.jpg
  • 09.58UT m1=-, DC=4, dia=15', tail=5' (20.3cmシュミットカセグレン 100倍)
  • 09.58UT m1=5.0, DC=2-3, dia=30' (5.0cm双眼鏡 7倍)

今夜も薄雲が拡がっているが、今の時間はまだ大丈夫。5cm双眼鏡で見るより中央集光が目立つ。20cm62倍でも星状核がわかり、細い尾のようなものが伸びているような?核のまわり1'以下の明るい内部コマ。317倍でも星状。近くの12.9等星より明るい。62倍では、北東の10.9等星まで、双眼鏡ではさらに遠くのEE Eriまでコマがかかっている。肉眼でもかろうじて見えたような?(4.7等?:極限等級5.2等)

(補足)「高倍率」といっても、普通の彗星では標準的な100倍です。コマ視直径は視野円とほぼ同じ。細い尾は、尾の方向の予備知識無しで見えましたが、確認してみると計算上の方向とほぼ一致していました。

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  • 0046P-2018_005.jpg
  • 12.60UT m1=-, DC=4, dia=15', tail=6' (20.3cmシュミットカセグレン 100倍)

前回と同じ20cm100倍でスケッチ。62倍では、尾は不明瞭で100倍以上なら見やすくなる。ごく小さい中央集光の中に核があり、恒星状。500倍でもかろうじて恒星状に見える。尾は100~167倍で見事。細い。それとは別に南東側にも拡がる?コマは視野の2分の1まで薄くひろがる。1時間後に見ると、だいぶ移動していた。

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  • 0046P-2018_007.jpg
  • 12.63UT m1=4.9, DC=3, dia=40' (5.0cm双眼鏡 7倍)

肉眼では認めるだけでも辛いが、双眼鏡では実に大きく見える。大きいコマで(幅はξ-οTau間の5分の5~5分の4くらいか)、やや集光があり中心は明るいが星状核は見当たらない。1985年のハレー彗星は、似た大きさだったがもう少し中心が輝いていたと思う。


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  • 0046P-2018_006.jpg
  • 12.61UT m1=4.9, DC=-, dia=- (0.0cm肉眼 1倍)

肉眼でも目をそらし気味にして、なんとか存在を確認できる。最微星5.1等星で、それよりはわずかに明るい程度。λCet(4.7)にちかい。コマの大きさはわからないが。ξ-οTau間(55')ちかくありそう。

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  • 0046P-2018_008.jpg
  • 15.64UT m1=4.4, DC=4, dia=50' (0.0cm肉眼 1倍)
  • 15.65UT m1=4.9, DC=3-4, dia=35' (5.0cm双眼鏡 7倍)

M45に近づいてきたので、無理して両方視野に入れてみた。46Pはやや中央集光が目立つ。コマは大きく広がり、M45の2分の1以上ある。コマに微星が接している。光度はかなりボカさないと比較が難しい。37Tau(4.3等)よりは暗い。

肉眼では、やはりかすかだが昨日、3日前よりは大きく見やすい。37Tauとほぼ同じ(ただし見にくい)。コマはM45に匹敵する大きさ。

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  • 0046P-2018_009.jpg
  • 15.68UT m1=-, DC=5, dia=5', tail=5' (20.3cmシュミットカセグレン 167倍)

20cm望遠鏡だと。中央集光の輝きが見事。数日前より明るい気がする。注視すると、尾が核から伸びているのがわかる。明瞭な輪郭はないが細い。視野全体がコマの中にあるはずだが。一見して7~8等の尾のある集光した明るい彗星のよう。

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  • 0046P-2018_010.jpg
  • 17.58UT m1=4.3, DC=-, dia=- (0.0cm肉眼 1倍)
  • 17.62UT m1=-, DC=5, dia=25' (11.0cmマクストフカゼグレン 40倍)

11cmで見てみた。よく輝く中央集光がわかり、星状核がわかる。9等星はすでに核から離れている。描いている間にも移動してしまう。核から上方にわずかにコマが濃く、その方向に幅広の尾があるようだが、20cmよりは分かりにくい。外部コマは5等星のそばまで広がっている。肉眼では、月明にもかかわらず面積体としてかすかに見える。

(追記)核を横切り左下から右上に伸びるラインは紙の汚れで、見えたものではありません。

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  • 0046P-2018_011.jpg
  • 29.62UT m1=6.1, DC=3, dia=20' (5.0cm双眼鏡 7倍)
  • 29.62UT m1=8:, DC=5, dia=12', tail=5' (20.3cmシュミットカセグレン 62倍)

遠ざかっているはずだが、以前より集光。中心の輝きが増しているように思える。核は恒星状で20cm317倍でも13等星の星状。スケッチしている間にもどんどん移動しているのがわかる。視野上方(南の方)に中心からの流れ(尾)があるように思える。コマ自体は大きく、遠くまで拡がっている。望遠鏡では光度はほとんどわからない。5cm双眼鏡でも、やや小さくなったがコマの輝度は上がり集光が増した?近くに6等星があり測光しにくい。6.4等星を巻き込んで5.6等星とほぼ同じ。5.9~6.2等星ともほぼ同じ。

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  • 0046P-2018_012.jpg
  • 30.62UT m1=5.8, DC=3, dia=25' (5.0cm双眼鏡 7倍)

天頂に近く、首が痛くなる高度。カペラに近づいた頃はまだ大きかったが、昨日、今日はやや小ぶりになった。しかし、集光はある。コマの雲は見やすい。高度は非常に見積もりにくい。7等ともみえるし、大きくぼかすと5等にもなる。5.87等星とほぼ同じか、わずかに明るい。

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  • 0046P-2018_013.jpg
  • 02.62UT m1=-, DC=4-5, dia=7', tail=5' (20.3cmシュミットカセグレン 100倍)
  • 02.64UT m1=5.8, DC=3, dia=20' (5.0cm双眼鏡 7倍)

年明け初のスケッチ。大きいコマは変わらないが、徐々に小さくなっている。核付近は依然として明るい。核は20cm500倍でも恒星状。ちかくの13.1等星とほぼ同じかわずかに暗い。5cm双眼鏡で暗くなっている。集光が弱まっている気がする。

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  • 0046P-2018_014.jpg
  • 03.64UT m1=5.8, DC=3, dia=30' (5.0cm双眼鏡 7倍)

頭上高くスケッチも大変。大きく拡散したコマは変わらない。視野を流しても見つけられる程度には見やすいが、コマの輝度は低く、条件が悪いとまったく見えないかも。集光は弱いが注視すると小さい集光部はわかる。コマの変形はわからず。光度は極端にボカさないとわからない。5.8~6.0等の間にありそう。

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  • 0046P-2018_015.jpg
  • 09.59UT m1=6.7, DC=2-3, dia=20' (5.0cm双眼鏡 7倍)

おおぐま座の鼻先にある。1週間前と比べてもだいぶ衰えてきた。まだ5cm双眼鏡を振って見つかる明るさ(見やすさ)ではあるが。6等星のそばであるが、コマは接していない。一見集光がないように思えるが、注意すると小さい集光部がありそう(9等の恒星を見ている?)。光度は近くの6等星より暗い。

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  • 0046P-2018_016.jpg
  • 17.79UT m1=7.3, DC=4, dia=15' (5.0cm双眼鏡 7倍)
  • 17.80UT m1=-, DC=3-4, dia=15' (20.3cmシュミットカセグレン 62倍)

依然としてコマは大きいが、核付近の輝きは失われた。20cm62倍で核はわからないが、100倍以上で13等程度の星状核がわかる。167倍~では、集光部のみが目立ち、集光の強い小彗星(直径1')かと思ってしまう。62倍で尾の痕跡はあまりわからず。5cm双眼鏡でもコマはさらに小さい。一見微星状だが注意するとコマが大きく見える。

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  • 0046P-2018_018.jpg
  • 01.72UT m1=9.5, DC=3, dia=5' (20.3cmシュミットカセグレン 36倍)

非常に拡散しているが、20cm62倍で一度見つけると見やすい。集光はほとんどない。平坦に近い。コマは大きく端は9等星にほぼ接している。100倍で中心のみわかる(わずかに集光)。36倍でも平坦。光度は9等星を巻き込んで測りにくいが、この星や付近の9~10等星にちかい。8.7等星よりは暗い。